討伐依頼:全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れ

矢木羽研(やきうけん)

29日は何の日?

「初の依頼が"全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れ"とはな。今日は焼き肉パーティだぜ! 29日はやっぱり肉の日だよな!」


 4年に一度だけ大量発生するというリープバッファローが、この町へと迫ろうとしている中、いかにもなパワータイプの男は斧を振り回しながら言った。普通、獣の肉は屠畜後に何日も熟成させないとあまり美味ではないのだが、彼はそんなことは知ったことではない。


「全く君は相変わらずだな。少しは情報収集をしたらどうなんだ。29日はブックの日でもある」


 隣に立ついかにも頭脳派データ使いといった風貌の青年は、左手で持った本を読みながら、右手の人差し指で眼鏡をクイっと直しながら言った。余談だがブックオフの29日ブックの日クーポンは2024年2月からナーフされ、従来の「500円以上の買物で300円引き」から「300円以上の買物で150円引き」になってしまった。ガッデム!


「服が汚れるのは嫌だけど、やっぱり私の魔法も必要みたいね。報酬でかわいい服買わなきゃ、今日29日は服の日だもん。マジカルチェーンジ!」


 地味なワンピースに身を包んだ少女は、呪文(?)とともに右手で魔法のステッキを振るう。すると彼女の体が浮かび上がって虹色に輝き、次の瞬間には白とピンクのフリフリのゴスロリドレスに包まれていた。最近実装されたばかりのジョブ:魔法少女である。


 彼ら3人組はゲームの装備やスキルそのままに異世界に転移してしまった。原理は不明だがここカクヨムでは珍しい話ではない。彼らは自分なりに今の状況を冷静に受け止めて、眼の前の目標に向き合っていた。


 *


「到着予測時刻まであと7分。覚悟はいいね?」

「ああ!」

「ええ!」


 地平線の向こうに土煙が迫る。戦いの幕が開けようとしている。


「肉のために!」

「本のために!」

「服のために!」


 彼らの決意と覚悟が勝利をもたらすことを信じて……!


 *



ご愛読ありがとうございました。矢木羽研先生の次回作にご期待ください。

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討伐依頼:全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れ 矢木羽研(やきうけん) @yakiuken

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