忌まわしき過去は夜ごと悪夢を呼ぶ

超時空伝説研究所

第1話 05:47 俺は悪夢に呼び起こされる

「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 俺は布団を蹴飛ばし、薄暗がりの中飛び起きた。

 枕もとのデジタル時計は「05:47」を表示して、ぼんやりと光っている。


「はぁ、はぁ。また、あの夢だ……」


 俺はぬるぬるした汗に全身を覆われていた。朝だというのに額からしたたろうとする汗を、濡れた手の甲で拭く。


 冷房の壊れた部屋。早朝とはいえ、真夏の空気は既に熱を持っていた。


 開け放たれた窓からカーテンを揺らして、わずかばかりの風が流れ込んでいる。その風が夜間の湯気のように、熱く湿っていた。


「くそっ! やってらんねぇ! 何だって毎晩、毎晩……」


 俺は悪夢に苛まれる。夜ごと、夜ごとに訪れる悪夢は俺の眠りを奪い去るのだ。


 ――全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れ。


「どどん! どどん!」と音を立てて、バッファローたちは突き進む。行く手を塞ぐものを飲み込み、人も建物も踏み倒し、突き壊して、ただまっしぐらに。


 ひたすら真っ直ぐに突き進むのだ。地平線の彼方から――俺を目掛けて。


 足音だけではない。眠りの中で、俺は奴らが立てる地鳴りまで感じるのだ。アパートを突き崩すほどの激しい揺れを。


 それが毎夜、いや毎朝続く。


 午前五時四十七分。一分と狂わない。

 毎朝正確に、その時刻になると奴らは俺の夢に現れるのだ。


「くそっ! くそっ! くそっ! 全部俺のせいか?」


 全ては一年前、俺が犯した過ちのせいだった。あれさえなければ、あんなことさえしなければ。


 安いからって、線路沿いのボロアパート・・・・・・・・・・・に引っ越してこなければ。


「ちくしょう! バイト代がたまったら、絶対引っ越してやる!」


 おれは始発電車が去った線路を窓から睨みつけながら、涙を流した。


(完)

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