足りない

ヒットエンドラGOン

足りない

 俺たちには三分以内にやらなければならないことがあった。



「なあ? もうやるだけ無駄だって……」

「そんな無駄口叩いている方が無駄だ。さっさと手を動かせ!」


 俺と友人のクラスメイトは二人揃って読書感想文の宿題を忘れていた。


 提出は次の国語の授業……残り三分しかない。


「今から本読んで感想書く気か? 絶対間に合わねえよ!」

「んな事は分かってる! だから読まずに書く!」


 俺も友人も、文学とは無縁の運動部だ。昨日も日が暮れるまで部活の顧問にみっちりしごかれた。疲れ果てた俺たちが宿題を忘れたのも当然の帰結という奴だ。


(本なんか読んだら絶対寝落ちするわ!)


 つまり俺たちは何にも悪くはない。こんな宿題を出した教師が悪いのだ!


 だが「部活で疲れて出来ませんでした!」なんて言い訳が通用する相手ではない。何故ならその教師は部活の顧問なのだから……


「往生際が悪い奴だなぁ。一緒に怒られようぜ?」

「嫌だ。俺は最後まで諦めない!」



 指定された文字数は800字以上、この条件をクリアして休み時間の間に感想文を書くのはほぼ不可能。


 だが、俺には一つ秘策があった。


「他人の作文をパクる!」


 仲の良い女子から作文を借りたのだ。しかもこの子の作文は丁度800文字!


 時間の無い状況下ではまさに最高の素材だ!


「おまっ!? 馬鹿か!? 絶対バレるぞ!」


 確かに俺は馬鹿だが、この友人にだけは言われたくない。


「無論、そのままでは出さない! 多少アレンジを加えて、 所々で文字数もキチンと合わせてる」

「そんな真似出来るなら、一から自分で書けよ……」


 うん、書いてる途中で俺もそう思った。でも原稿用紙は400字分しかないのだ。



 いよいよ最後の行へと取り掛かる。これならギリギリ……


「…………あ、一字足りない」


 最後の最後で文字数の計算をミスってしまった。








「……なんで最後に句読点が二つあるんだ?」

「……オリジナリティーを出す為です」


 書き写したのがバレた俺は顧問にめっちゃ怒られた。






 完

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