聖なる政争・地球最大の決戦
ぶらボー
たぶん予算委員会
時の総理大臣、
烈風元年、日本国の首都は新東京――無敵要塞型国会議事堂「キャメロットの円卓」。そのメインホールで疾風丸は、最大野党・ロングスリーパー党の党首、
「話し合いで解決できないことがある」ということを悟った日本国民達は、投票による選挙ではなく、暴力の優劣により国会議員を選定する選挙、「デスバトル選挙」を開始。そんな選挙制度改革が行われてから七十二代目の総理大臣が疾風丸であった。疾風丸は敵対する候補者を一子相伝の暗殺拳、
だが義春はそんな疾風丸さえも苦戦する、数少ない猛者の一人であった。義春の拳法によって疾風丸が受けたダメージは大きい。特に闘気を纏った正拳の直撃を受けた左腕はもう使い物にならないだろう。
一方の義春の左手には光り輝く球体が握られている。そしてメインホールの中央には地中深くまで続く大穴があけられている。
――義春は地球の中心まで届く穴をあけ、地球の核……コアを抜き取ったのだ。
彼の左手に握られているものがそれだ。それが持つエネルギー量はもはや想像がつかない。実際、このコアが抜き取られた瞬間から、それが原因と思われる異常な現象が世界各地で発生し始めた。全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れ、天空を埋め尽くすリュウグウノツカイの群れ、街中で奇声をあげるカクヨムユーザーの群れ……etc.
「諦めたまえ疾風丸君。コアを抜かれたこの星は、あと三分で爆発してお亡くなりになる」
義春が勝ち誇ったように笑みを浮かべながらそう言うと、疾風丸は右の拳を自身の前に上げて、握る。
「まだだ。この三分に――俺は政治生命の全てを懸ける」
疾風丸の右拳が青く光り輝き、彼の
「その技……! 貴様死ぬ気か」
「疾風丸死すとも政治は死せず!」
疾風丸は地に伏せると同時に義春目掛けて突撃する。三分以内に義春を倒し、地球のコアを元の場所に戻さなければならない。
義春は迫る疾風丸目掛けて手刀の十二連撃を放つ。疾風丸は蛇がうねるかのような軌道で回避しながら接近を続ける。
六撃目の手刀が疾風丸の頬を掠めていく。極限の集中状態にある疾風丸は頬から流れ出る血を気にも留めずに、義春の懐に入らんとする。
十一撃目の手刀が疾風丸の左上腕に突き刺さる。既に重傷を負っている左腕への一撃がもたらす痛みは強烈で疾風丸は思わず
しかしその瞬間浮かんだのは、厳しい選挙戦の中、応援してくれた国民達の笑顔であった。
疾風丸が受け取ったモチ代や氷代を狙って、街中で襲い掛かってきた敵議員。その圧倒的な強さとガトリングガンに敵わず、血まみれになりながらモチ代や氷代を奪われかけた自分に――「がんばれ」「負けるな」「税金泥棒」「美人のボンキュッボンお嫁さんロボを全世帯に配れ」と声を掛けてくれたみんな。
疾風丸は歯を食いしばり、一歩踏み込んだ。その一歩が疾風丸を必殺の間合いへと運ぶ。
「こ、こいつ……!」
義春は回避動作を取ろうとするも間に合わない。疾風丸の青く輝く拳が義春の胸を貫く!
「が、がはぁ!」
義春は大量に血を撒き散らしながら吹き飛んで死んだ。
心矢割轢拳奥義・
「ご、ごふっ!」
疾風丸が
疾風丸は義春の手に握られた地球のコアを奪うと、
しばらく重力による恐ろしい加速が続いたが、それは突然
ふと、意識が薄れ、天地が逆さまになるような感覚に陥る。疾風丸は慌てて首を振り、意識を持ち直した。自分の死は近い。早くコアを元の位置に戻さなければ。疾風丸はゆらゆらと不安定に揺れながら、コアのはまっていた
――自分はなんでこんなことをしているのだろう。
国や民など、命を捨ててまで守るようなものだろうか。いつもあいつらは、自分を褒めることなどなく悪口ばかり言ってくる。増税メガネとかおまえの母ちゃんデベソとかT〇itter上手だねとかクトゥルフにいそうとか。身を粉にして働いてもそんな扱いだ。なんで俺は総理大臣になったんだろう。
――誰かを救うのに理由はいらない。
昔、心矢割轢拳の師匠であり、父の嵐丸から言われた言葉だ。その言葉の真意が今、わかったような気がする。
「……親父はそう言ってカッコつけたかっただけなんだ」
クソッ!
やがて
数少ない、生命が生まれ育った星は生まれてから五千兆年目で消滅したのであった。
この話には教訓がある。
まず、こういう話で地球を決戦のバトルフィールドにするのはよくないということである。貴重な大自然を大切にしよう。
そしてもう一つ。
KACの期間が短いからって
(おわり)
聖なる政争・地球最大の決戦 ぶらボー @L3R4V0
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