第三話 何でバレてる?
「らっしゃい! お二人様ご来店でーっ!」
「「「おうっ!」」」
「すみませーん。メガマシマシ頼みたいんですけど~」
ネタじゃないのかよ……。しかも店長さん、ふわふわお嬢様感満載の佳奈に目ぇぱちくりしてんじゃねえか。
「君たちが?……ってゆちかちゃんじゃない。この間も美味しそうに食べてくれてありがとうね」
「いえ! こちらこそいつもありがたいっす!」
「ははは、いつでも歓迎するよ」
優しいなあ店長さん。いつも動画撮りの時はノリノリで協力してくれるし、本当にありがたい。
……とはいえ。
ここのメニューはあたしでも食べきって無料がいいとこだ。懸賞金付きはマジでヤバい。
こないだはガチムチのおっちゃんが半べそかいてたもんな。ま、あん時は多分懸賞金がとんでもねえやつっぽかったけど。カウンターからはみ出る
「じゃ、ゆちかちゃんは知ってるだろうけど改めて簡単な説明をしましょうか」
「は~い」
「うい」
●
「学生さん達は食べたら無料までが多いかな。今日はメガマシマシコースって言ってたけど本当にいいの? 麺5玉20分で食べきれなかったら料金は頂くし、頼んでからやめますっていうのも無し。考え直すなら今のうちだよ」
「はい! 大丈夫です!」
「お、おい……佳奈」
「私、結構大食いだから!」
そんな佳奈見たことねえよ。でも何か目ぇキラキラさせてっし……。撮影許可貰ったはいいけど今日はやめときゃよかったかもな。店に迷惑をかける、まである。それは絶対にダメだ。
食いきれないなら頼むなって話だし、食い物を残したらバチが当たる。頼んだもん、出されたもんは米一粒だって残さず美味しく食う。それがあたしの信念だ。それができなきゃあたしが
「無理だ。やめとこうぜ」
「あれ? いつもいっぱい食べてるでしょ? 元気出るよ」
「牛丼メガのマシマシをお替りするようなもんだっての。だいいちそれだって佳奈にゃ絶対無理だろ」
「え? 大丈夫だよ。だってほら」
壁? ……写真?
苦笑いをした制服姿の女子のガッツポーズ。
「あれが何?」
「同じ学生だよ?」
「おい、よっく見ろ! 並んでるムッキムキの店員さんより横幅広いじゃねえか!」
え、いや待てよ? あたし、周りから見たらあんな体格ってこと? 自分で気付いてないだけ?
「な、なあ。正直に言ってくれ。あたし太った? 佳奈から見たらあんな感じなん?」
「やだー」
「笑い事じゃねえ!」
動画控えてダイエットすっか? そうだ、ジム。ジムに行くか! ……待てよ? 脂肪を筋肉に変えるならボクササイズとかどうだ? そういやこないだ駅前で月々サンキュッパのジムができたとか何とかのチラシを配ってた気がする!
「ゆちか、私よりスタイルいいのに何言ってるの?」
「何を言ってんの、はあたしのセリフだ!」
「大丈夫、ゆちかなら女子力でカバーできるよ。私も頑張る」
「お前、それガチで言ってんの……?」
「うん」
何が言いたいのかさっぱりわからんし、それあたしに一番足りてねえやつだろ……っていうか。
「いやいやいや、無理無理無理! 店には悪いけど今日は帰らせてもらおうぜ?」
「えー」
アヒル口すんなや。
「うちも無謀なチャレンジはしてほしくないですね。食事って一日に五回も十回もできないじゃないですか。いろいろ考えて、時には悩んで自分で食べたいものを食べる。だからうちに来られたお客様にも納得のうえでお腹いっぱい食べてもらって、来てよかったっていう食事をしてほしいですから」
いいこと言うなあ、店長さん。
「な? こう言ってくれてんだし……」
「店長さん、もう一つ聞いていいですか?」
「あたしの話も聞いてくれ!」
「あ、はい。何なりと」
「他のみなさんはどんな時にチャレンジに来られるんですか?」
どんな時?
「あ~、なるほど。チャレンジといった意味合いでは、例えば普段と違うワクワク感を楽しみたかったり、あとは気合いを入れたい、絶対に頑張りたいというような事を控えてる方も来られますね、受験や試験とか」
「ほうほう、なるほどなるほど」
「そんなみなさまがうちでチャレンジ成功した後にしばらくして『試験受かりましたよ!』『完食したから頑張れました』と顔を出してくれると私達も嬉しいですねやっぱり。お役に立てたのかなあって」
へえ。
そういうのもあるんだ。
「で」
ん?
「ゆちか、タメ息つくくらい悩んでるんでしょ? 気合い入れなくっていいの? いっぱい食べて元気出して、気合い入れなおしなよ」
「んー……でも、あたしの元気のない原因、気合いいらんかも」
「あのさ。ゆちかが元気ないのって、門倉君の転校が原因じゃないの?」
「げ。あ、いや……そんなこたあ……ねえよ?」
何でバレてる?
あたし、寝言でも言ったんか?
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