第2話 じゃんけんは正義!(俺以外)

   『じゃんけんの神様』


その名の通り、じゃんけんが全ての神様だ。


例えば、村で今年は小麦を植えるか大麦を植えるか、村民会議を悩んでいるとしよう。

すると、ふらっと神様が現れて、「お前が勝ったら大麦を。そっちのお前が勝ったら小麦を。」と、命令するのだ。

そして、勝った方の穀物を植えることになる。


すると、絶対大当たりする。


豊作も豊作になり、近隣の村となぜか被らず、高値で取引されるのだ。


またある時は一人の女性を巡って恋愛戦争をしているとしよう。

そんな時にも神が現れて、「じゃんけんに勝ったやつが、旦那になる。」と命令。


結果、おしどり夫婦になる。

生まれた子供は、多才な子ばかりで、村の繁栄に大いに貢献した。


神がふらりと現れて、じゃんけんをさせれば、未来は成功しかないのだ。

たとえ、振られた男がどういった顛末になったかは問題にはならない。

結果的に村に利益をもたらすので、負けた人間の運命は捨て置かれる。


この村では、『じゃんけんは絶対』。



盲信的に神を崇め奉る村民。

俺もよちよち歩きの頃には、ありがたい神様だと思って毎日礼拝していた。...ような気がする。

しかし、物心ついた時には、もうすでに『神なんかクソ喰らえ』と言うようになっていた。

そんなことを言う村民は俺だけだ。

罰当たりという勿れ。

これには深い深い理由があるのだ。




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