君もたい焼きを食わないか?

真偽ゆらり

薄皮パリパリたい焼き(天然もの)

 薄皮たい焼き(天然もの)職人には三分以内にやらなけらばいけないことがあった。


 まず、たい焼きを一匹一匹個別に焼き上げる『天然もの』用の焼き型に秘伝配合の生地を規定量流し入れる。その規定量はたい焼きにおける生地の割合を限界ギリギリまで減らした極少量だ。


 生地の量は規定量との誤差、三分3%以内。


 生地を流しいれた後は特製の『つぶあん』や『こしあん』、その他お品書きにある各種の『あん』をお客さんの要望に合わせ木べらで掬う。その『あん』の規定量は生地と打って変わって焼き型にギリギリ収まる限界までと多い。


 研ぎ澄まされた職人の手は当然の様に『あん』も規定量との誤差三分以内の量を一掬いで取って焼き型へ。


 生地、『あん』ときたらもう一度生地だ。でないと人体模型の様に半分中身が丸見えのたい焼きになってしまう。


 『あん』の上からかかる生地も誤差三分以内で注ぐ職人。


 そして職人は素早く焼き型を閉じ、炭火の焼き台へと並べる。この際、焼きむらが出ないよう既に焼いている焼き型を引っ繰り返すのを忘れてはならない。また、焼き始めて三分経過したものは中のたい焼きが焼き上がっているので火から外すこと。


 そう薄皮たい焼き(天然もの)は焼き時間が約三分なのだ。

 その三分以内に誤差三分以内でたい焼きを火にかける。それが薄皮たい焼き(天然もの)職人が三分以内にやらなければいけないこと。


 誤差が三分を超えれば売りである薄皮のパリパリ感が失われるかもしれない。

 時間が三分以上掛かってしまえば薄皮生地故に焦げてしまうかもしれない。


 さて、職人が焼き上げた薄皮たい焼き(天然もの)を見ていこう。


 限界まで薄くなるよう焼かれた生地は中の『あん』が透けて見えるほど薄く、噛めば『パリッ』とした食感と共に小麦の風味が口いっぱいに広がる。

 気持ちの良い生地の食感の後には程よく温まって甘味を増した『あん』が口の中を幸福で満たしてくれ――


「いいから早く食わせるにぇ!!」

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