いつから俺の飼い猫になったんだ?
黒羽カラス
第1話 縁側に一匹と一人
庭の半分くらいを畑として利用している。最近、ホウレン草の種を植えた。時期としては合っているのだが、寒い日が続いたせいで
打って変わって今日は朝からほんのりと暖かい。期待できるかもしれないと部屋のカーテンを勢いよく開けた。視線を上げると白い雲の合間から青い空が
一気に期待感が膨らんで足早に階段を下りた。薄暗い居間を突っ切り、カーテンとレースの合わせ目を広げた。窓越しに右手を見ると芽が出ていた。数は
そうは思っても嬉しくて、その日の執筆は快調に進み、明日の休みを確保した。
翌日も天候に恵まれてすっきりと晴れた。ウキウキした気分で一階に下りてホウレン草を確認する。昨日とは違い、土が異様に盛り上がって黒く変色していた。夜半に雨が降った訳ではない。他のところは白っぽく乾いた状態だった。
大波に乗り上げたような芽が幾つも見える。軽く息を
大型の鹿や猪の仕業ではない。山が近いのでイタチやテン、タヌキの可能性が濃厚。これが自然の
今日は自分で決めた休日。朝から酒を呑んでもいいだろうと思い至る。
場所は縁側で日当たりの良いところに座布団を置いた。
ゆるゆると風が吹く。甘い香りが強くなる。左手にあるロウバイに目をやると別の物が目に付いた。
縁側の左端に首輪を付けていない白猫が
チロリでお猪口に酒を注ぐ。音を立てないようにしてゆっくりとした動作で口に運び、チビリと呑んだ。横目をやると白猫は同じ姿で大きな欠伸をした。前脚を器用に使って顔を洗う。
天候が気になって空へ目をやる。雨を降らすような黒雲は見当たらない。気分よく呑み進めた。
チロリが空になった。左端の白猫は同じような姿で居座る。立ち上がった瞬間、逃げ出すことが容易に想像できる。しかし、呑みたい欲求は強く、少しの
警戒させないように白猫への視線を控えた。速やかに家の中に入って湯煎を始める。完成まで待てず、ぬる燗で縁側に戻った。
座布団に腰を下ろし、一息入れてそっと横目をやる。
白猫はいた。背中が無性に痒いのか。仰向けの状態で身体をくねらせる。
そんな姿を
青空の下、俺と白猫は勝手気ままに時を過ごした。
いつから俺の飼い猫になったんだ? 黒羽カラス @fullswing
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