第2話 朱雀の過去 ブリードの未来

「おい黎菜 機体の調子はどうだ?」


「あんたが無理やり動かすから前から死にかけだった動翼系統が死んでるよ」


「あっやっぱり死んでた?途中で舵の効きが悪くなったから黎菜の整備不良かと…」


「あぁ?」


「なんでもないですぅ…」


二人がこの基地に配属されたのは2か月前

開戦の前日だった

最前線の基地であるここには

開戦と同時に空襲があり

20人いたパイロットのうち空に逃げれたのは11人

残りは全員地上で爆弾の炎の一部になった


その日、なんとか空に逃げたうちの一人が前日やってきたばかりの朱雀だった

目の前に会った機体に飛び乗ると、滑走距離を200mも取らずに離陸し

積んでいたスクランブル兵装で

敵爆撃機編隊を追い払ったのだった

その機体の整備員が黎菜でそのまま整備してもらっている


ここブリード連邦ラエード空軍基地のあるラエール島は

海軍基地もある軍事施設が多く集まる場所だ

海軍の第3艦隊も、開戦と同時に最前線のこの基地にやってきては

敵艦隊との砲火を交えている


そして、このラエール島の対岸にある国がセレナ共和国

共和国とは名ばかりで独裁政治がおこなわれている

ブリードとは長年冷戦状態にあった

だが、1990年ブリードと南の超大国ヒエラが戦争を開始

セレナとブリードは協力関係を結び

ヒエラを撃破、友好関係を結んでいたと思っていたのだが…

そこに、今回の戦争だ

セレナが宣戦布告と同時に航空部隊による大規模攻撃を実施したため

本土の基地はほぼ壊滅状態に陥った

生き残った基地はここラエール基地と内地の一部だけ


「……なぁ黎菜」


「ん?」


「俺が戦闘機乗りになった理由知ってるか?」


「知るわけないでしょ 聞いたこともないわ」


「俺、前の戦争で家族を全員亡くしてるんだ」


「え………」


「1992年。忘れもしない12月4日 家の上空で空戦があった」

「そこでブリードの機体が撃墜したヒエラの機体が家に墜落」

「学校に行く途中だった俺以外はみんな死んだ」


「なっなんでブリード空軍に入ったの あなたにとっては仇も同然…」


「だからこそだ 俺の目標は2つある」

「まず、この世から戦争をなくす 2つ目は俺の仇を殺す」

「この二つだ この世から争いがなくなれば…すべて解決なんだがな」


「そう…」


気まずい沈黙があたりを包んだ時

格納庫に設置された警報機が鳴りだす


《パイロットは直ちにブリーティングルームへ集合せよ 繰り返す…》


「はぁなんだよまったく 黎菜 飛べる機体用意しといてくれ」

「急に飛べとか言われそうだから」


「はいはい わかったわよ」


「んじゃ よろしく」




朱雀がブリーティングルームに入ると、

パイロットたちと司令が部屋に集まっていた


「これで全員か じゃあ話を始める」

「明日から、セレナへの反転攻勢を開始する 明日は0520から作戦行動を開始し」

「セレナの軍港 グーデラの黎明攻撃に移る いいか」


「了解した」


「以上だ 今日はしっかり休め」


「軍港攻撃か 隊長 対艦攻撃用の機体で行きますか」


「いや、お前は対空戦闘用で行け 俺たちが鈍重な攻撃機を使おう」


「なんで!」


「お前はうちのエースだ お前が死んだら基地を攻撃されたら終わりだ わかるな」


「くっ……………」


「大丈夫だ そう簡単に落ちることはない」


「そうですが…」


「早く床にはいれよ 明日は0400に集合だ」


「了解しました」


ブリードからセレナへの反転攻勢が始まる

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それでも僕は空を舞う 明日の夜空を守るため @8492adler

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