第一章 追放聖女と騎士隊長⑦
小一時間も馬を走らせただろうか。瘴気がもうもうと立ちこめて視界も悪くなってきた
目をこらすミーティアは馬の速度を上げようとするが、馬はこの先になにがあるのかわかっているのか、
「たくさん走ってくれてありがとう。このあたりで待っていてね」
そのとき、また前方から悲鳴が聞こえてきた。同時になにかが暴れ回るような物音も。
ミーティアは
「魔物のこれ以上の
「おお──っ!」
総勢十人ほどの騎士が
先ほどのモグラのような魔物も大きかったが、空を飛ぶあの魔物も、やはり民家ほどの大きさだ。
不気味な羽をバサバサと動かしながら飛ぶ魔物は
「羽で
先陣を切って戦っている騎士が大声で叫ぶ。
ブォン! と風がうなるほどの音が聞こえて、ミーティアはとっさに地面に
(うぅ、瘴気の風だわ。ビリビリする……!)
目に
その声には聞き覚えがあった。
ほとんどの騎士が風に吹き飛ばされ地面を転がる中、彼だけは立ったまま踏ん張り、風がやむと同時に跳び上がる。
彼は
「はぁあああ──ッ!!」
剣の切っ先を下に向けた彼は、全体重をかけて魔物の上にドゥッ! と降りる。
剣先は深々と魔物の頭を
「うわぁっ!」
真下にいた騎士たちがあわてて横に跳んだ。
ドォン! と地面を
地上にいた騎士たちはなんとか立ち上がりつつ、弓矢で魔物の
だが魔物はより大きな悲鳴を上げて暴れ、
「うっ!」
真正面にいた騎士が粘液を全身に浴び、崩れ落ちるように
(いけない……!)
ミーティアは粘液まみれの騎士に向けて
「
集中すると、手の中の
「治れ……!」
もはやピクリともしなくなった騎士に向け、全神経を集中させる。
杖先の宝石がまばゆいほどの光を放った。同時に紫の粘液が
「──げほっ!」
粘液のせいで呼吸不全に
「あ、ああ、なにが起きたんだ……!?」
「動かないで!」
ミーティアは目を白黒させる騎士をまたいで杖を構える。魔物が再び粘液を吐き出しそうなのを見て、杖を思い切り
「展開!」
ビシッと空気が張り
魔物が吐き出した粘液はその壁に
『ギャァアアアアアアア!!』
自身の粘液にまみれた魔物が悲鳴を上げる。
上に乗っていた騎士が「おわっ」とバランスを崩しそうになるが、すぐに
「くそっ、
彼の言葉で、あっけにとられていたほかの騎士たちがたちまち
上に乗る騎士自身も、魔物の
「いいかげんに……しろっ!!」
彼はトドメとばかりに魔物の目に剣を突き刺す。
魔物はまた『ギィイイイイイイ!!』と悲鳴を上げて暴れ回るが、ほどなく動きを止め、ぐったりと倒れ伏した。
「今だ!
騎士が剣を
「……はぁ、はぁ、
「
「は、はい、なんとか……でも……」
全員の視線がミーティアに向けられる。彼女が助けた騎士もまた、
隊長格の騎士は部下たちの視線の意味を正しく理解して、ずかずかとミーティアに歩み寄ってくる。
「おまえ、さっき結界を展開していたな? それにそいつも、毒を
追放上等! 天才聖女のわたくしは、どこでだろうと輝けますので。 佐倉 紫/角川ビーンズ文庫 @beans
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