ネットで出会った恋のお相手たち

 当時の私は社会的引きこもりというやつで、両親とならばお出掛けはするのだが、リアルでの社会参加は何もしていないという状態だった。そんな私がのめり込んでいたのがインターネットだった。


 ネット黎明期に個人サイトを運営していた私は、それで出会った人々を始め、出始めだったSNSでも友達を作ったり、巨大掲示板でも友達の輪を広げているといった状態で、ネットの中でだけは盛んに人の輪の中に入って行っていた。


 その交流の中で、優しくしてくれる人に片っ端から恋をしていった。


 片っ端から。そう、まさに片っ端からである。


 ちょっと優しくしてくれた巨大掲示板で知り合った人にサシでオフ会してしまった事もある。それも一人や二人じゃない。何人もだ。


 その人たちは実際に会ったら大したことが無かったので、好意はすっと冷めて行った。危険な目に遭わなかったのはただ単に幸運だったとしか言いようがない。


 個人サイト時代から付き合いのある人から優しい言葉を掛けられただけで、次の日には「好きです」と告白してしまっている事もあった。これには相手もびっくりした事だろう。私としても今になって考えてみると恥ずかしすぎて、地球のコアまで続く穴を掘って入ってしまいたいと思うほどだ。


 そもそも、だ。顔はかろうじて知っていても、本名も居住地も定かではない相手だ。相手だってこちらの顔だけは知っていても他は知らないのだ。そんな相手から言い寄られても困惑でしかないだろう。


 だけど、当時の私はそれを恋だと勘違いしていたのだ。恐ろしい。それを逆手にとってこちらに害を与える人間に遭遇しなかったのはもはや奇跡だろう。


 ネットでちょっと優しくされただけでこれなのだ。リアルで優しい言葉を掛けられたらどうなるのだろう? と疑問を持つのは当然だ。次のページでは、リアルで出会った恋のお相手たちについて話をしたいと思う。

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