指名手配犯の貼り紙

カリナ〈仮名〉

第1話指名手配犯の貼り紙

来年で高校を卒業する私達


同じマンションの三階に住んでるサユリとは

最近じゃ忙しく


目指す進路の違いとかで

すれ違いが多く

学校以外は

ほとんど電話で会話してる


因みに私の家は一階

部屋の窓からは道路の手前に庭の草木が生えてて通行人の姿はあまり見えにくい


「じゃ今夜電話するね

  ちゃんと忘れないでよw?」


「うんっwわかってるw」


短い休み時間の中

サユリからの相談事を聞く約束をした



すっかり日が沈んだ頃

放課後のバイトも終え

自転車で家路へと

急いでいると


交番が見え

外の掲示板に目がとまった


指名手配犯のポスターだ


この間から全国指名手配になった凶悪犯で

顔が印象的なことから

初めて貼り紙を見た時から嫌に記憶に残っている



見れば見るほど不気味・・・早く捕まればいいのに



夜中

サユリから

約束の電話がかかってきた


「もうw寝てたでしょw」


「ごめんごめんねw」


「まぁ許してやるわw親も寝静まってるし

折角時間が合わさったんだから

ゆっくり話そうよw」



「うん、そうね」


親が別の部屋で寝てる手前

部屋の照明はつけず

カーテンを開けた


月明かりが

ほんのり部屋へと差し込んでキレイ


そう思いふと、目線を下げる


すると生い茂る庭の草木を手前に向かいの道路の奥の壁に

人の顔が見えた


驚いた私はビクリと震えるが

それは帰りに

指名手配犯の顔だった


「何だ貼り紙か・・・」


携帯を耳に当てたまま独り言のつもりで呟くと

すぐさまサユリが訪ねた


「?貼り紙って?」


「ああ、指名手配犯のポスターよ

最近ニュースになって全国指名手配になったおっさんの貼り紙が

窓の向こうの道路挟んだ隣の建物の壁に貼ってあるから

庭の草木に紛れて覗いてるみたいに見えてさw

目が合っちゃってちょっとビクッと来ただけw」



「ちょっと待って・・・アタシも確認してみる」


サユリの通話の先から

カーテンを開ける音が聞こえた


しばらくサユリとの間に沈黙が訪れる


「サユリ?・・・どしたの?」





「落ちついて聞いてね・・・


一階のアンタの角度からは貼り紙に見えるかもだけど・・・

草木も邪魔しない三階のアタシの家の窓からは


アンタの”部屋を覗いてるおっさんの姿”しか見えない・・・よ?」


「・・・ってこと・・・は?」


変な汗とともに

全身に鳥肌がたち始める



「ごめん、一旦電話切るね

明日掛け直すから・・・

とっとにかくアンタはカーテン閉めて寝な!」



通話は切れ

無心のままゆっくりと

カーテンを閉め布団にくるまった


「いやぁっ・・・!」



そして私は一睡もできないまま

朝を迎えた・・・


翌日


早朝のニュースで家のマンションから離れたすぐ近くで手配犯が捕まったという情報が流れた


サユリがあの時確認して通報してくれなければ

偶然目が合ったばかりに

第一目撃者として

犯人に目をつけられ亡くなってたかもしれない・・・



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