ニュートラブル×ニュートラル×ツインズ
黒澤三六九
第1話 お前たち男じゃなかったの?
関東って人が多すぎる!
六年ぶりに帰ってきて、まず抱いた感想はそれ。
今も、それなりに混雑している電車に揺られながら、少しげんなりしていたところだ。
『まもなく、登戸です。小田急線は……』
アナウンスとともに、電車は徐々に速度を落としていく。
はあ、やっと降りられる。
キャリーバッグを持ち上げ、駅のホームに降り立つと、何だか懐かしい匂いがした。もう三月下旬だというのに、頬を撫でる風はまだまだ冷たい。
昨日まで住んでいた新潟と比べると、こっちの乾いた風は寒いというより痛い感じがして違和感がある。川崎ってこんなに寒かったのか。やべえじゃんね。
暖かい車内に戻りたい欲求を抑えつつ、一旦ホームの端に移動して一息ついた。
安置発見である。
平日のお昼前だってのにこの駅ときたら、降りる客が多いこと多いこと。久方ぶりの地元なのに、懐かしさの余韻に浸る間もなく人の流れに呑まれそうになったじゃねえか。
コートのポケットに入れていた、ペットボトルのほうじ茶を一口含む。
不意に、発車メロディの「ぼくドラえもん」が流れ始めた。
そういやここって「ドラえもん」の施設があるんだっけか。
ドラえもん、助けて。関東はちょっと人が多すぎるよ……。
無情にも軽快な音楽はぴたりと止んでしまい、ドアの閉まった電車が駅からゆっくりと走り出した。ホームからそれが完全に見えなくなる頃には、人の流れもまばらになってきた。
ごくりとお茶を喉に流し込んで、エスカレータ目指して移動を始める。
駅前は色々変わってんのかな。
さすがに六年も離れていれば、変わったものはたくさんあるんだろうけど。
「……」
彼らはどう変わったのだろうか。
今日迎えにきてくれる予定の親友たち。
というか、双子。
そいつらとは、小学校に入る少し前から一緒に遊んでいた。いわゆる幼馴染というやつだった。
お互いの住んでいる家は少し離れていたから学区こそ違ったが、幼稚園時代に地域の文化センターで意気投合して以来、一緒に遊ぶ仲になった。
キッカケは些細なもので、双子の兄と俺の名前が同じ「ハルカ」だったことだ。
あ、ちなみに俺の名前は潮見 遥(しおみ はるか)です。よろしくどうぞこんにちは。
さておき。
小さい頃って、割と波長が合うっていうのか、初めて会う子でもすぐに仲良くなれたりするよな。
俺たちもきっとそれだったのだ。
しかし、意気投合したのも束の間、その日のうちに俺たちは大喧嘩することになる。
理由はあだ名だ。
俺と双子の兄は、名前が同じだから周りが呼ぶ時に混同するだろ?
だから、仲良くなった証にあだ名をつけようとなったわけなんだが、アイツ自分は「ハル」とかいうシンプルイズザベスト感丸出しのものにしながら、俺のことは「ルカ」って女っぽいあだ名をつけてきやがったのだ。
それでどっちがどっちにするかで大喧嘩。
初対面で。今思うと血の気が多すぎる。
戦闘民族かよ。
おまけに負けたしな、俺。
今更ながら、どうして仲良くなれたんだか訳わからなくなってきたわ。
だが、一つだけ言えるのは、兄の方——「ハル」は強かった。
子供って単純だから、自分よりも強い奴は一目置きたがるんだよな。だから、俺にとってアイツは「特別」だった。
アイツを倒すのは俺だ、的な。
あれ? やっぱり戦闘民族じゃんね。
「……さて」
エスカレータを上りきってコンコースに出ると、傍らの売店には可愛らしい「ドラえもん」グッズがこれみよがしに並べられていた。
まるで観光地じゃねえか、なんて思いながら、ふと双子の弟のカナタ——「カナ」のことを思い出す。
アイツ、可愛いグッズとかぬいぐるみが好きだったな。大人しくてあまり前に出てこない性格だったが、初対面で同名の男との喧嘩に負けたどこかの誰かにも「大丈夫?」と優しく手を差し伸べてくれた優しい奴だ。
俺のことを「ルカくん」と、もう一人の兄のように慕ってくれた。
元気にしてるだろうか。
「……」
昔は、互いにいつまでも一緒に遊んでいられると思っていたから、俺が引っ越すことが決まった時、二人が俺以上に大泣きした姿がずっと脳裏に焼きついている。
特にハルはめっちゃくちゃな大号泣だった。普段泣くところなんて見たことがなかったから、驚きとか他の色んな感情が混じり合った不思議な気持ちになって、つられて泣いてしまったくらいだ。
ただ、あまりに泣くものだから、俺の涙が先に引いたわ。逆に冷静になったじゃんね。
結局、メールアドレスを交換(当時の俺は携帯なんて持っていなかったから、親のを借りた)し、引っ越しても定期的にやり取りすることを条件にようやく彼らは泣き止んだ。
それからは親のパソコンを借りて、細々とメールでのやりとりを続けていた。
そして、数ヶ月前。
俺がまた川崎に戻ってくることを伝えたところ、当日は迎えに来ると行ってくれたってワケよ。
会えるのが本当に楽しみだ。
JRの改札を出て、目の前にある小さな時計塔が待ち合わせ場所だ。
顔を上げて時間を見ると、ちょうど待ち合わせの十分前だった。
もしかしたら、もう来ているかもと思ったら、何だかそわそわしてきた。
いや、久しぶりに会うんだから当たり前だろ。緊張くらいするって話。
幸いなのかどうなのか、時計塔の周りに双子の男子らしき人はいない。同い年くらいの女子が一人と高齢の男性が一人だけだ。
安堵しながら、その真下のベンチへ腰掛ける。
深呼吸すると、改札の向かいにある駅ビルから漂う揚げ物の匂いが、ふわりと鼻孔をくすぐった。
腹が鳴りそうになるが、今はそれよりも考えないといけないことがある。
奴らが来たら、どう声かけるのが正解だ?
気安くいくべきか、丁寧にいくべきか。
そもそもの話、俺はハルたちが来たとすぐに分かるのか?
会うの六年ぶりだぞ?
おまけに、俺は今の彼らの顔立ちを知らない。
中学に入ってからは自分の携帯電話を買ってもらったので親のパソコンは卒業したが、近況報告の手段は依然としてメールだけだったからな。
二人からは「れいる」とかいう連絡ツールが画像とかも送れて便利だから「すまーとふぉん」に買い変えろと口酸っぱく言われたのだが、機械ってやつは怖いし難しいからな……。
おまけに、顔が分からなかったとしても、双子は目立つから探すのも難しくないとタカを括っていたのだ。
憎らしいことに、アイツら兄弟揃って美形だったから、きっと周りの目を引く容姿に成長しているはずだ。
とりあえず駅に着いたことと、今日の俺の服装を簡単にメールで送っておく。知り合いと会うはずなのに、何だかオフ会に来たような気分だ。
どっか遠くから見てたり……しないか。
硬い時計塔の柱に身体を預けて、目の前の改札口をぼーっと眺めることにした。
「……っ!」
すると、不意に隣にいた女子が慌てた様子ですまほを見ながら周りをキョロキョロとし始めた。
うわ、この子すげえ美人だ。
……が、近寄りがたいタイプの美人だ。
見たところ俺と同じくらいのはずなのに、髪は明るい茶色に染めているし、まだ肌寒いにもかかわらず服装は露出多め。いや風邪引くって。
それに足と腹は冷やすなって。腹巻き巻いとけ腹巻き。
「……」
不意に目が合った。
やべ、訴えられる!
俺はさっと目を逸らしたものの、
「ねえ」
遅かった。
話しかけられてしまった。
「悪い、ジロジロなんて見てないしそんなつもりではなかった。出来心のつもりだった。弁護士が来るまで話すことはありません——」
俺は必死に思いつく限りの弁明を述べて、
「もしかして、『ルカくん』?」
「は?」
あ、はいどうもルカくんですこんにちは。
じゃなくて。
今この子、「ルカくん」って言ったよな?
空耳じゃないよな。しかし、目の前の子がそう呼ぶ理由が思いつかない。
知り合いに美少女いたらすぐ分かるしな。
はっはっは……。
俺と面識がないということは、つまりこの子は双子のどちらかの彼女ということか!?
そうなのか!?
アイツら、迎えにくるとか抜かして、その実は俺に可愛い彼女を自慢したいだけか!
可愛い彼女と毎日やりまくり自慢か!
と。
……いや、アイツらはそんなことするような奴じゃないだろ。
黙って裏切るはずがない。
メールでも「彼氏彼女なんて出来たことないし、今は作る気ない」とか言ってたからな。いやさすがに彼氏は出来てたら気ィ遣うけども。
話は戻るが、それなら目の前の美少女は一体どなた様?
うーん、「お前誰?」とか初対面で聞くのも失礼だしな。
ここは優しくいくか。
「あなたのお名前なんですか?」
「どうしてちょっと「犬のおまわりさん」風味の聞き方なのよ」
だってあの犬すげえ優しいだろ。迷子の猫につられて泣いちゃうんだぞ。心優しすぎてクレーム受けたら潰れちゃうんじゃないかとか考えちゃうだろ。
そもそもの話、こちとら女耐性があまりねえんだよ。どう話せばいいのか分からんねえんだわ。
ふいと顔をそらすと、
「え、まさかルカくん、緊張してる?」
顔をずいっと近づけて、彼女は囁いた。
「ふじゃけるな、そんなんじゃねえ」
「あ、そう? ふーん?」
「というかオメェ誰だ?」
「今度は謎に悟◯風味だし」
真似しようとしたんじゃねえ、緊張して声が裏返ったんだよ。
「いいから。まず名を名乗れ、名を」
「名前ね、じゃあ当ててみてよ」
じゃあって何だよ。
悪戯っぽく微笑む彼女に内心突っ込む。
そもそも会ったこともねえ女の名前を俺が知ってるわけねえだろ。変なこと言う前に、その寒そうなスカートの丈を伸ばせ丈を。
と。
ここで不意に閃く。
もしかしてアイツら、俺のために小学校時代に遊んでた友達にも声かけてくれたんじゃないか?
それだ!
中学時代に垢抜けてたら、知ってる子だったとしてもは分かる自信がねえ。
あの双子め、粋なことしてくれる。
持つべきものは親友である。
つまり、目の前の彼女はかつて俺と仲良かった誰かさんってことだろう。双子とは学区が違ったから、小学校関係ではなく、地域の文化センターで一緒に遊んでたメンツで、かつ仲の良かった女の子というと……。
「まさか『痛がり』花梨か?!」
口癖が「アイタタタ」で名前が井田 花梨(いだ かりん)だから通称「痛がり花梨」と呼ばれていたアイツだろ。
あまり話したことはなかったけど、お互いに顔と名前が分かる女子なんて他に思いつかねえから間違いない!
しかし、
「は? 誰その女」
「ヒュッ〜……」
空気が凍った。
思わず口から空気が漏れ出た。
明確にここまで選択を間違えたと分かる状況ってすげえな。一周回って自分に感心してしまったわ。
リアルタイムでえらい睨まれてるけどな。
まるで蛇に睨まれた蛙にでもなった気分だ。
「ねえ」
「はい」
思わず敬語。
「もしかしてだけど? ルカくんボクたち以外の女ともちゃっかり仲良くしてたんだ? ふーん? もっともーっと仲良い女がいたから? へーえ? ボクたちのことなんてすっかり忘れちゃったんだね?」
そして怒涛の疑問符。
意識高い系アパレル店員かよ。
なんて冗談言ってる場合じゃねえ。
「何で怒ってんのか知らねえけど、こっちじゃ殆ど男友達としか遊んでなかったし、アンタみたいな綺麗な知り合いいねえんだわ」
理由もわからず怒られるのは納得がいかないので言い返すと、
「綺麗……」
引っかかるところはそこじゃねえのよ。
「結局さ、君はどこの誰さんなの。ほら、教えてごらんなさい」
「綺麗だなんて……照れるよ……」
「だから」
「もう、照れるって……」
ゲームのNPCかよ。
マジで誰なんだこの美少女A(仮称)。
いよいよ分からなくて怖くなってきた。
勿体つけずにさっさと答え合わせしてくれねえかなと思うが、中々こちらの世界に戻ってきてくれない。
途方に暮れていると、
「やっぱJR側だった。おーい、『ルカ』!」
俺の名を呼ぶ女子の声がした。
振り向くと、これまた見覚えのない女子がこちらへ駆け寄ってくる。
嘘だろおい。こっちはもうキャパオーバーだわ。
その女子は、隣にいる美少女Aに負けずとも劣らない整った容姿に、これまた身体のラインを強調するラフな服装。そして、サラサラの金髪がとても周りの目を引いていた。
見てるこっちが寒いから丈を伸ばせ丈を。
美少女B(仮称)は、美少女Aとは対称的に快活な印象を与える雰囲気をまといながら、小田急側からこちらへ一目散に走ってきた。
すれ違う男たちがはっと見惚れて振り返る程のオーラ。
まるで、そう——『ハル』のような。
「久しぶり! 元気してた!?」
「ああ、人並みには元気だ」
おまけに、あたかも昔からの知り合いのような距離感で話しかけてくるから反射的に返事しちゃったじゃんね。
「ちょっと」
すると、隣にいた美少女Aが不満そうにこちらを睨みつける。
「ルカくん、ボクの時とは反応が違くない? やっぱりああいうのが好きなんだねそうだよねボクなんてハルと違うなんちゃってギャルでおまけにクソメンヘラ病みファッション女なんだから——」
「え、そうなの?」
どう違ったの、と首を傾げるB(もはや「美少女」と代名詞を付けるのも面倒なので、以下「B」とします)。
横でぶつぶつと何か呟いているA(同上)のことは、まるで日常茶飯事だからとでもいうようにスルーしているけどいいのか。
慣れた様子だし、まあいいのか。
「見ず知らずの女子だろうと、気さくで良い奴そうならひとまず普通に返事くらいはするわ」
「ぐぅ」
俺が質問に答えると、我に返ったAはぐうの音も出ない様子で実際には「ぐう」と言葉を吐き出した。
どっちだよ。
あと声に出すなよ。安っぽくなるだろ。
俺は目でそう訴えるが、Aは素知らぬフリして不満を吐露し続けた。
「たしかにボクの態度に問題なかったとは言わないけどさ、ルカくんだって『アンタは誰なんだよ。まず名を名乗れ、名を』とか偉そうに言ったり、ボクのことを他の女と間違えたりしたじゃん。お互い様だよ」
それを聞いて、Bは表情をほんの少し曇らせて不安そうな瞳を向けてきた。
「カナ、それほんと? だって、アタシらメールでずっとやり取りしてたじゃんね」
「…………」
「ルカはアタシらのこと、忘れちゃったの?」
「いや……」
そこでようやく確信が持てた。
というか、これまでの違和感がストンと腑に落ちた。
横に並んだ美少女の、瓜二つともいうべき顔の造り。つまり、双子。
そして、今さっき片割れが放った「メールでずっとやり取りしてた」という言葉。
さすがに、ここまで情報が揃っていれば馬鹿でもわかる。
ずっとメールでやりとりしていて、俺が今日待ち合わせをしている双子なんて一組しかいないのだから。
「……あのさ、一つ確認していいか」
何とか俺が切り出すと、二人は示し合わせたかのように同じタイミングで首を傾げた。
「……ん、なに?」
「いーよ、なになに?」
まさかの事実に動揺を隠せないが、確認しないわけにもいかない。
何とか息を整えて、俺は念の為というか限りなく答えに近い推測を確定させる意味合いも込めて、彼女らに尋ねたのだった。
「マジで『ハル』と『カナ』なんだな?」
ドッキリじゃないんだよな。
男だと思ってずっと遊んでいた、俺の大切な親友なんだよな。
あの、太陽のように周りを照らす「ハル」と、月のように優しく寄り添う「カナ」なんだよな。
「ん、最初からそう言ってる」
カナはしれっと答えるが、嘘つけ。
言ってはいなかっただろ。
「当ててみて」とか煽りムーブかましてきただろお前。
何、記憶失っちゃったの?
「当たり前じゃん! もう顔忘れちゃったワケ?」
一方、ハルはそう言って快活に笑い、背中をバシバシと叩いてきた。痛いって。
忘れてたわけではなく、思い違いというか、勘違いというかね……いや痛い痛い痛い。
「ちょ、痛……あの、ホントに悪いんだけど——」
かくかくしかじか。
さすがに誤魔化しきれないというか、このままだと変に誤解が生じたまま気まずくなりそうなので、正直に俺の勘違いについて話すことにした。
結果、
「あはは! ルカひっど!」
「そんな勘違い、漫画でしか見たことなかったけど、本当にする人いるんだね」
ハルにはケラケラと笑われ、カナにはジトっと睨まれてしまった。
「ウケるね。まあ昔はアタシもやんちゃしてたから、ちょっぴり男っぽかったかもしれないし?」
下手な男子より男っぽかっただろ。
元々は勘違いしてた俺が悪いけど、お前たちも自分を女子だって一度も言ったことなかったし、服装だってボーイッシュなものばかりだったから、イメージが先行してたんだよ。
「わざわざ『ボクたち女の子です』なんて、言う必要ないからね」
それは、ごもっとも。
実際に、今カナが言ったような内容を当時彼女らから言われたとしても、さすがにどう答えればよいか反応に困っただろうな。
俺が黙っていると、彼女は続けて言った。
「それに服装は双子ならではの理由があって、昔はママやパパも姉妹でお揃いの服を着せたがってたからね」
ああ、確かにそういうの双子の親御さんにはよくありそうな話だ。
「あの時はハルちゃんが『動きやすいのがいい』ってママにめっちゃ言ったせいで、ボクの服まであんな男の子っぽいものになっちゃったんだよ。ホントはもっと可愛い服がよかったのにさ」
カナは、ハルに詰るような視線を向けた。
「ごめんってばー。だって外で遊ぶのにスカートは動きづらかったんだもん」
ハルらしい理由だ。
俺らは学校も違ったから、体育の着替えみたいな客観的に性別で分けられるイベントもなかったし、気がつく要素といえば服装くらいだ。
唯一の判断材料が、そういう事情で男っぽくなっていたのなら、本人に聞く以外に方法はなかったかもしれないな。
「ルカ君が鈍かったからってのも大いにあると思うけどね」
ハルの次はこちらにもチクリと詰る視線が飛び火してきた。
「悪かった。本当にすまん」
理由はともかく、女子に対して「ずっと男だと思ってました」なんて失礼な話だしな。
「まあまあ、カナもその辺にしときなって。ルカも、ちゃんと約束通りに帰ってきてくれたんだし」
「……それは、まあ」
ハルに諭され、カナは納得いかなそうにしていたが、ひとまず溜飲を下げてくれたらしい。
ホッと胸を撫で下ろす。
あーよかった。
その様子を見て、双子はいたずらっぽく笑うと、あらためて俺の正面で横に並んだ。
服装も髪型も違うし、化粧もうっすらとしているようなのに、二人の顔は瓜二つだと一目でわかる。すげえな、双子。
「ルカ」
「ルカ君」
二人は声を揃えて言った。
「「おかえり」」
「……おう、ただいま」
関東は人も多いし、ごちゃごちゃしているが、彼女らとまた会えたと思うと、それもまた悪くないと思える。
……ただ、男友達だと思っていた双子が実は女の子だったとか、こんなベタなことあるか?
これ昔通りに接していいのか?
どうすればいいんだ?
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