5真実という名の事実

「ふう…うん。みんな帰ったみたい。で、話って?」

桜N

「紬ちゃんは休み時間に、私に話しておきたいことがあると、放課後教室に残るように指定してきた。もちろん、彼女も一緒に」

「……っ、え、っと…」

「言いにくいなら、無理して言わなくていいよ?紬ちゃんが苦しくなる必要はない」

「……優しいのは、忘れてないみたいだね」

「忘れる?」

「…さく、ら。あのね、今から言うことは信じられないことかもしれない」

「う、うん。なんか、緊張するなぁ…」

「……桜は今、記憶喪失になっている」

「え…?どういうこと?」

「今まであったこと、全部打ち明けるね。桜が記憶を徐々に忘れていく奇病の持ち主であること。この間ここの窓際からグラウンドを覗いてそこで活動している人たちを何してるんだろうって不思議そうに見ていたこと。そのせいで私と桜が二人であんたが記憶を失くす件で一緒に泣いたこと。桜が自分の思い出を忘れることをずっと怖がっていたこと。そして今日の朝」

「桜に、大事な親友、つまり私の顔を忘れられたこと」

「え…?」

「全部、全部、事実だよ」

「そんな…」

「だいぶ、症状が進行しているみたいだね。反応を見る限り、『忘れる』ことも『忘れている』みたい」

「え……え、ど、私はどう、すれば…」

「そういえばね、ふたりして泣いた時に、記憶からは消えても記録には残るから、って言ってた気がする…!そうだ!思い出を作り直せばいい!」

「そ…そう?そう……そっか!」

紬N

「桜は不安そうな様子でいながらも、なんとか受け止めてくれた。優しいからね、この子は」

桜N

「不安だけど…紬ちゃんがあんなに真剣に言うなら、多分そうなのだろう。信じよう。そうだ。信じよう」

桜・紬

「(なるべく二人同時に)大丈夫!」


END


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ひとりぼっち まなじん @manajinn-tanigami

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ