当たり前と日常の世界裏

那須茄子

当たり前と日常の世界裏

 忘れられた路地裏。

 今日も性犯罪が当たり前のように、此処で為されていた。


 それを、僕は見つめている。

 物陰ができた所で、世界の残酷さを呪った。



 耳をそばだてると、聞こえてくるのだ。

 嗚咽や鳴き声、笑い声と悲痛を伴った喘ぎ声が。



 とうてい興奮できるものではないし。

 

 好きな女の子が、レイプされているというのだから尚更だ。


 

 僕は見ていて、腹が立つ。

 けれど、彼女を助け出す勇気も、勇気を背負うだけの力もない。


 僕はただ、見つめるしかできない。

 不幸な事故として、切り捨てるしかないのだ。

 

 彼女は。



 見るからに柄の悪そうな不良達に、泣きながら犯されている。


 一人が満たせられれば、もう一人へと。


 不良達は入れ替わるごとに、彼女の白い身体に触れては激しく動き出す。


 その度に、彼女の身体は軋む。まるで加減を知らない子供が玩具をあっさりと壊すような。いつ彼女が壊れてもおかしくないほどに、彼女のお腹は大きく孕んでいた。



 きっと、このまま何時間と続けば、彼女の身体は大変なことになるだろう。


 拷問を通り越して、死に至る危険すらあるように思われる。



 一刻も早く、あの不良達を殺してしまわないと。

 誰かが、あの不良達を殺してはくれないだろうか。そうすれば、彼女は解放されるというのに。


 そんなことを思ってみるものの、多分彼女に救いはやって来ないだろう。

 


 『──よし、もう満足だ。それじゃ、この女殺しておくかっ』



 不良達は自分勝手に満ち足りると、あろうことか彼女を殺害すると言い出す。


 日頃から人を殺害するのには慣れているのか、躊躇いというものがまるでない。

 

 手にはどこから持ち出してきたのか、べっとりと赤黒く錆びついた鉈がある。



 彼女は失神しているのか、目が虚ろだ。自分が今から、殺されることを全く分かっていないようだ。


 その間にも時間は過ぎ、世界は回る。止まることをよしとしない。


 黒光りする鉈。

 それらが、いくつも彼女の頭上に重なり。

 

 一斉に振り下ろされた。

 

    

 .....さようならの言葉を呟くより先に、彼女はバラバラにされて死まった。



 

 

 




 

 

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