ジンジャアシラップに寄せて

あにょこーにょ

第1話

 少女は、人差し指にたれてしまったシラップを、みずみずしい木苺色の舌で舐めとった。

 その艶かしい姿にボクは、頬が火照っていくのを感じる。


「良いにおいでしょう?」


 少女が上目遣いでボクを覗きこむ。

 少女の問いかけによって、かすかに漂うジンジャアの香りにボクはやっと気づいた。そして次の瞬間、少女はボクの脣に人差し指を押し付けた。シナモン、蜂蜜、黒胡椒、クロオブが混ざり合い、いま盛りどきである花のごとく、甘く、たおやかで、切ない香りがボクの肺を埋め尽くしていったのだった。


 ボクはほんとうの初恋といふものを、知ってしまった気がした。


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ジンジャアシラップに寄せて あにょこーにょ @shitakami_suzume

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