第11話 転職する勇者
「フッフッフ……」
「なんだそんな格好をして」
黒いビリビリに破れたローブ? を着ている勇者。
不適な笑みを浮かべ気持ち悪い。
「厨二病ってやつじゃない?」
「そうか、あれが厨二病か」
「厨二病ちゃうわ! みてわかりませんか?」
「わからんな」
「盗賊ですよ! 盗賊! 転職ですよ、ジョブチェンですよ! かっこいいでしょ!」
「いや、全然」
「厨二病ね」
「酷くないですか! ちょっとはあげてくれてもいいじゃないですか!」
こいつはこれが本当にカッコいいと思っているのだろうか。
「で、なんでいきなり転職なんだ?」
「いやですね、僕もずっと勇者じゃなきゃダメなんだと思ってたんですよ。でもね、こっそり神殿に忍び込んだら水晶で転職できることを発見したんです!」
始まりの街にそんなものがあったとは。
「ほう、それでなぜ盗賊?」
「もうね、わかったんですよ。勇者じゃあなたには勝てない、それで一番可能性を感じたのが盗賊だったんですよ!」
「いやいや、なんでそうなるのよ……」
苦し紛れすぎるだろう。
リリンも呆れておるわ。
「いいですか? 盗賊ってのは物を盗めるんです。ということはですよ! あなたみたいな化け物のからはめちゃくちゃいいものが盗めるはずなんです!」
「ほう、それを盗めば勝機があると」
「ですです!」
「ならばやってみるか?」
「えぇ! でも一つお願いがあります!」
「なんだ?」
「盗みをするまで攻撃しないでください」
なんと、わざと受けろということか。
ふざけたことを言う勇者、いや盗賊につい笑いがでる。
「いいだろう、動かぬからやってみるがよい」
「よし! それじゃあいきますよ!」
「こい」
受けてたとうではないか。
そうせねば不憫だ。
「盗む! ――あれ?」
「どうした?」
なんともないが一体何を盗んだというのだ。
「おかしいな……盗む! 盗む!」
「ねえ、なんか慌ててない?」
「その様だな」
「いや、そんなはずは……試しに街の人からはいろいろ盗めたし、スライムからだってなんかゴミを盗めたのに……盗む! 盗む!」
また罪を犯しておるではないか。
「もうよいか」
「いや、もうちょっと待ってください! 盗む!」
何度やっても何も起こらない。
勇者、もとい盗賊は……ええい、ややこしい!
とにかく勇者がなにかずっとポーズを決めておるがもう飽きた。
「もうよいだろう。また出直せ」
「いや、やだやだ! これじゃあただ馬鹿なポーズを色々試してる厨二病じゃないですか!」
「だから厨二病だって言ってるじゃない」
「ともかく……」
「いや、やめて、このまま戻ったらまた街で何されるか――ヴギョッポ!!」
さあ、市中引き回しでもされてこい。
魔王軍最強の俺が最初のダンジョンに派遣されたら勇者が詰んだ件〜何回やってもサタンが倒せない〜 茶部義晴 @tyabu
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