第10話 クレーマー勇者第三弾
「ちょっと! ひどくないですか!?」
「またか……」
この出だしはわかる、文句を言いにきたんだろう。
装備は胴のみ穴の開いた服で、頭は前と同じヘルメット、手にはプラチナの剣を持っている
「せっかく頑張って山越えしたのにまた始まりの街ですよ? 言いましたよね! 何度も! 追放されたって!」
「ああ、だから死んでそっちに行った時は思わず笑ってしまったぞ」
「いや、笑い事じゃないんですよ! 神官にも『いい加減にしてください』って言われたんですよ? なんかもうキレてるじゃないですか!」
「自業自得だろう。それにのこのこ自慢しにくるからこうなるのだ」
あのまま次の街に行っておけば良かったものを。
「だって、嬉しかったんだもん! 初めてあなたを出し抜けて嬉しかったんだもん!」
「ねぇ、この人本当に勇者なの? なんか小物臭いんだけど……」
隣にいるリリンが口を挟む。
「小物臭いんじゃなくて小物なんだ」
それにため息で返してやった。
「そうそう! これもです! 何で増えてるんか!? あなた1人にすら勝てないんですよ? 2人とか無理ゲーじゃないですか!」
「いや、お前が次の街に行ったからこうなったんだが」
結局良い場所がないとかでリリンはここに居座っている。
「意味がわからないですよ! というか、なんであんなに次のダンジョンのボスが弱いんですか! ワンパンでしたよ! 普通逆でしょ? 何度も言ってますけど最初のボスなんて雑魚を配置するもんなんですよ!」
「それは魔王に言ってくれ」
「あなたがいるからそこに行けないんでしょ!」
「確かに」
反論できん。
というか次のダンジョンボスはオークリーダーと前に初めて知って驚いたぞ、めちゃくちゃ雑魚じゃないかと。
「もうやる気なくなりますよ? いいんですか! 勇者辞めちゃいますよ!?」
すっかり拗ねてしまった、なんか申し訳ない。
「勇者がいなくなったら私達は嬉しいけど。人間の精気吸い放題じゃん!」
「そうだな、何一つ悪い事はない」
「むきー!! ちょっとは困ってくださいよ! なんですかみんな寄ってたかって僕を邪魔者みたいに!」
「だから自業自得と……」
「むきー!!」
地団駄を踏んで怒り狂う勇者。
「なんかこんなのから逃げてきたなんて恥ずかしいわね」
「だろう」
リリンも呆れておるわ。
「で、そろそろ良いか?」
「言い訳ないでしょ! まだ言いたい事が――グヘァ!」
なんかいつも以上にうるさいから退場してもらった。
「私、ここにいない方がいいのかしら?」
「いやあいつの言う事は聞かんでよい、良いところが見つかるまでは気にせずいろ」
「やーん、サタンちゃん優しー!」
「こら抱きつくでないわ!」
はて、またくるかなあいつは。
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