第3話

え、誰??


ななは必死に声を上げるが、袋の上から口を押さえつけられ大きな声を出すことができない。


「シズカニシロ」


後ろからななを羽交いじめにしている人が、彼女を怒鳴りつける。


ななを襲っている男は3人いて、1人はななを後ろから羽交い締めにし、もう1人は口を押さえながら、首元にナイフを突きつけていた。残りの1人は暴れる彼女の足を縛りつけていた。


彼女は必死に抵抗したものの、成人の男の力には敵わず、縛りつけられた足を肩に担がれ、されるがままの状態であった。


彼女は元の場所から少し離れたところまで強引に連れて行かれると、何か木造の扉が開く音が聞こえ、その奥にある地下室の中に入れられた。


後ろから羽交締めにしていた男がななの両手を紐で拘束し、口を押さえていた手と被せられていた袋が外れた。しかし、それは一瞬であり、すぐに口枷をはめられ、布で目隠しをされてしまった。


ななに対する拘束器具の取り付けが終わると、男達は地下室の鍵をかけ、どこかに行ってしまった。



建物自体が絶えず揺れているから、ここは近くに停留していた船の中のはず。どこかに誘拐されるのだろう。大声を出したところで、ここからじゃ誰にも聞こえない。



まあ、聞こえたとしても、このブローチのせいで誰も助けてくれないか。


さっきの男達の訛りからして、あの人たちは北の国の工作員だろう。だとすると、この船の行き先は北の国だ。



ここで暴れても、助けは来ないし、むしろ殺されるかもしれない。だけれど、祖国に帰っても売国奴として殺されるか強制収容所行きだ。


だからといって、東の国に残っていても未来はない。彼女の未来には絶望しかなかった。



「誰か‥助けて」


彼女の助けを求める声に耳を傾ける者はいなかった。




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村娘の旅日記 @Nanamican

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