第2話
授業が終わる鐘が鳴ると同時に、教室がざわざわと賑やかになる。ななは今日の授業がやっと終わったと退屈そうに欠伸をした後、眠そうな足取りで教室を出た。周囲を見ると友達と談笑したり、放課後のクラブ活動をしている人達の姿が視界に写った。彼女には友達がいない。誰も彼女と友達になりたがらないのだ。恐らくクラスメイトは彼女が難民であることを風の噂で聞いたのだろう。放課後のクラブ活動も参加出来ないわけではないが、参加したところで部員に邪険にされるのが目に見えている。そもそも学校も義務であるから行っているだけで、正直行く意味が彼女には分からなかった。彼女が難民であるから、将来、仕事を得ることが出来ない。政府が難民に職を独占されるのを恐れているからだ。従って、学校を卒業した後は税金で生活をしなければならない。勉強は本来、将来の選択肢を増やすものであるはずだが、彼女が勉強したところで彼女の未来は変わらない。彼女がどれだけ勉強しても、難民であるために、税金に頼って差別されながら生きるという1つ未来しか歩めないのだ。
勉強なんてする意味が無い。私がどれだけ勉強しても何の役にも立たない。私が私の進路を決めることは出来ず、私の将来は国家の手中にある。クラスメイトの皆はそれぞれやりたいことがあって、当たり前のように自分の人生を決めることが出来る。だけど、私は北の国で生まれた難民だから、できない。
学校で同級生を見ると彼女はいつもそんな思いにかけられる。そんな気分になると、彼女はいつも学校から遠く離れた、両親の遺骨がある海辺に向かった。
「ママ、パパ、私どうしたらいいの?」
「私、どうやって生きていけばいい?」
海に着くと、そこには船が1隻停留しており、波でギーギーと音を出しながら揺れていた。その船から近い砂浜に座ると、彼女は悲しそうな声で天国の両親に語りかけた。両親は石の壁のところで殺害された後、他の犠牲者と共に、この海の底に沈められた。遺族は就労禁止にされていたため、犠牲者のお墓や慰霊碑を建ててあげることができなかった。
彼女は自分の将来に対して悲しみに暮れていると、突然後ろから誰かに羽交い締めにされ、袋を頭から被せられた。
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