本当の話

今日は、作者である僕の話をしようと思う

僕の先に書いてる2編の小説がホラーの割に、あまり、怖くないのには、理由がある

僕が僕自身が、幽霊というものの存在を信じていないからだ 幽霊の存在を信じてる人は、幽霊がその場にいるかもしれないと想像し、恐怖を感じる事ができる その恐怖を文章で表現し、人に伝える事もできる

しかし、俺には、そういう感覚がない

幽霊に対して、恐怖を抱くという体験をしていないから、当然、そのありもしない感情を自分から捻り出し、文章にする事は、不可能だ

幽霊どころか、オカルトやスピすら信じていないのだから

今まで、生きてきて、朝の星座占いが当たった事すら、一度もない 気にしいな性格だから、大概の朝の占いは、チェックしてるが、占い通りに人生が進んだことなど、一度もない

だから、そういうスピ的な能力は信じないし、占い師は、捕まらない詐欺師だと思ってるし、幽霊も誰かの作った創作物だと思っている ゴジラと一緒だ

霊体験を語る怪談も所詮、フィクションの作り物に過ぎない

みんな、存在しないものを怖がっている

中には、本気で幽霊の存在を信じてる人らもいるだろうが、僕は、そんなものは、見た事がないので、信じない

でも、子供の頃は、信じていた

それは、何故だったか、今になって思い返すと、私は、幽霊を子供の頃に見た事があったからだった

自分は、何故、今の今まで、その事を忘れていたのだろう?大人になるにつれ、幽霊否定派の意見を聞くうちに、考えが変わったのか?

いったい、どのタイミングで?

それが一向に思い出せない

一番、最初に見た幽霊は、小学生の頃だった

それは、ある日、小学校の放課後児童で集まり、教師が撮った写真の中だった

私は、写真の中で中央で赤いビニールバットを握って、太陽を差すようにポーズを取っていた

各放課後児童もカメラに顔を向け、ポーズを取るなり、何かやっている

私の隣、平面の写真では、隣だが、実際は、隣後ろには、七五三帰りに見える赤い着物に髪飾りをつけたまりを持つ少女がガラス扉に薄く映っていた

放課後児童にそのような少女は、いなかった その場の誰もが、彼女の存在を認識していないし、誰なのか知らなかった

でも、反射したガラス扉の光の中で彼女の姿が薄くだが、はっきりと映り込んでいたのだ

私が何故、その写真を発見したのかと言うと、友達の家族旅行写真に幽霊が映り込んでいるのを見せてもらったからで、我が家にもないかと、家中のアルバムの中を探し回って、見つけたのだ

私は、すぐに友達を呼び寄せ、ほら、ここに幽霊が映ってる!と見せたが、 え?これ、幽霊ちゃうんちゃう? とか 見えへん とか言われ、我が家の心霊写真は、無かった事にされた

どうやら、その写真の中の幽霊は、俺には、はっきり見えているが、他の友達のクラスメイトには、はっきりとは見えてないらしく、また、全く見えない子もいて、この世ではっきりと彼女の赤い着物と髪飾りと鞠を認識してるのは、俺だけのようだった

今回、このエピソードを書くにあたり、家中、探し回って、当時のアルバムを見つけ、それらしい写真を見つけたが、放課後児童や赤いビニールバットを構える俺は、映っていたが、写真の中のガラス扉に赤い着物姿の彼女の姿は、なかった

俺の脳が彼女を認識しなくなったから、見えなくなっただけで、彼女は、今もこの写真の中にいるのかもしれない

あの時、見えへんと言った友達と僕は、一緒になってしまったのか

幽霊を信じなくなる事で幽霊を認識できず、幽霊が見えなくなる というのは、よくあるらしい

今回の事を書くにあたり、この心霊写真(なのか?)の話を霊感があるという友達に話したら、


心霊写真なら、あんたもう一枚あるじゃん


と言われた

「は?」私は、わけがわからなかったが、どうやら、私がSNSに載せたプライベートな写真に幽霊が映っていると言うのだ

それは、ある映画館のエレベーター 有名なアニメ映画が公開された時期の写真で、そのエレベーターの外扉にその有名なアニメのイラストがプリントされていた 私は、それをスレッズ用に正面から撮り、扉に巨大にプリント化されたアニメの黒の部分が光で鏡になり、イラストに挟まれる形で私も映った

その偶然できた黒鏡に映った私の顔がよく見ると、白く歪んでいる

それを見て、私の霊感があるという友達は、 髪の長い女性が映ってる などと言った

私は、その当時、マスクを付けていたから、白く歪んでるのは、ただのマスクだろうと言ったが、

彼女は、頑として、幽霊だと譲らなかった

私は、まぁ、そういう事もあるだろう と思った

小学生だった頃の私が見えていたものを彼女は、おそらく、見ているのだ

幽霊は、幽霊を信じている人にしか見えないのだろう 例え、正体が不織物マスクだとしても、彼女ら幽霊を信じている人には、幽霊に見えるのだ

そして、僕は、今、小学生の頃の友達と同じく、幽霊を信じていないから、マスクは、マスクに見えるのだ

人の脳は、ちょっとした思い込みでバグを起こす

人間の認識してる現実自体が不完全なものだから仕方の無いことなのだ

我々が見ている現実は、あくまで脳を介して見ている現実なのだから、――

現実なんて、ほんのちょっとしたことで簡単に歪んでしまうのだ

他にも霊を見たことが、私には、ある

朝、起きてトイレ入ろうとして、扉が開かないので、おもいっきり、ノブを引っ張ったら、扉を挟んだ反対側のノブを手首から先の無い紫の手が掴んでいた これは、一緒に起きた妹も見ていたが、妹は、今、離婚した母方についていき、父方についた俺とは、連絡をとれない状態なので、この当時の確認は、現在、とれていない

紫の手は、瞬きするうちに一瞬で消えたし、僕が単に寝ぼけていただけだろ、と今は、思っている

その自宅のマンションのトイレでは、排尿中にそういう照明じゃないのに、いきなりトイレ中が紫に染まるなどのドッキリ的な霊障が起きたりもした

当時は、それだけで怖かったが、景色が紫色になるぐらい、今、考えれば、何の害もないのだから、ビビりすぎだった 紫になったのは、3秒程度ですぐ元に戻ったのだし

他にも霊のようなものを見た事は、ある

今までのは、小学生までの話だったが、それは、中学生の頃の話だ

俺は、中学一年の掃除当番で二階に繋がる階段をほうきで掃いていた

同じ班のTは、一階に繋がる階段、Sは、躍場おどりばを箒で掃いていた

私は、掃除に集中していたが、視界の端にセーラー服を着て、階段を駆け下りていく少女が見えた

しかし、おかしい

階段を駆け下りるには、まず、私の正面を通らなければいけない

彼女は、私の正面を通過せず、いきなり、階段に現れ、階段を駆け下りたのだ


なんだったのだろう?


今から思えば、彼女が着ていたセーラー服もうちの学校の制服とは、違うものだった気がするが、

当時、俺は、相当なのんびり屋で困惑しながらも、掃除を続けた

すると、一階に繋がる階段を掃除するTが「ぎゃっ!」と声を上げ、躍場まで駆け上がって来て、


「今、誰か女子生徒、通らんかったか?」

とSと俺に訊いてきた


Sは、「しらん。誰も通ってへんぞ」と言い、


僕は、「通った。誰か確かに通ったの、見たぞ」と答えた


T「その女、俺の前、通って途中で消えたぞ」


S「嘘やろ。俺、何も見てへんぞ」

つまり、こういう事だった

正体不明のセーラー服少女は、俺の掃除してる二階への階段にいきなり現れ、階段を下り、その先のSの掃除する躍場では、忽然と姿を消し、再び、Tの掃除する一階に繋がる階段で姿を現し、Tの前を通り過ぎ、消えた


僕「ひょっとして、幽霊?」


S「やめてくれよ!俺、なんも見てへんねんから!」

この当時の事をSに聞こうとしたが、Sは、すでに自殺していた

Tは、Tで消息不明である

作り物のストーリーと違い、現実は、謎を解決する事なく、謎は、謎のまま終わる

大人になってから、霊を見ることは、なくなったが、毎夜、男にレイプされる夢を見るようになった

しかし、車に轢かれた猫を供養したら、その夢は見なくなり、便秘もしなくなった

猫に願ったのだ

この事からも、わかる通り、俺は、どうやら、20代の前半までは、かなり霊的なものを信じていたようだ

その原因は、わかっている 母親がいわゆる霊感体質で霊を信じていたからだ

幼い子供にとって、母親は世界の全て

母親から霊というものを教えられれば、それが、その子の常識になる

そして、その子は、霊が見えるようになり、霊障に遭ったりするようになる

認識が幽霊を呼び寄せる

認識がそういう世界を作るのだ

では、何故、俺は、幽霊を信じなくなったのだろうか

それを今、思い出さなければならない

もちろん、両親が離婚して母親から離れたのも理由の一つかもしれない

霊を信じる人が周りにいなくなり、冷静に物事を見れるようになったのだ

あと、大きなきっかけとなったのは、20代の後半で統合失調症になった事だ

統合失調症になってから、いろんな見えない人の声が聞こえるようになった

それを霊の声だと考えた私は、夜な夜な声に導かれ、徘徊するようになり、家族に大変な迷惑をかけた

しかし、処方された薬を飲む事により、霊と思っていた声は、聞こえなくなった

薬で抑えられるということは、霊は霊ではなく、ただの病気だったという事だ

今までの体験や霊障も病気の一言で片付けられてしまう

それは、強い思い込みだったり、気のせいだったり、勘違いだったりして、過ぎ去った後は、もはや、夢に近く、現実とは言えない

俺は、これから幽霊を仮に見ることがあったとしても、脳のバグだと思うことにしている

人間が完璧でないのと一緒で、脳も完璧ではない

だから、バグを起こす事もある

それが、今の俺の認識だ

その事を霊感があるという友達に話すと、

「いや、あんた、めっちゃ呪われてるやん」

と言われた

しかし、そこで俺は気づいてしまう

俺に霊感のある友達などいなかった

「お前は、誰だ?」

と言った先に映ってるのは、鏡の中の自分だ

「僕は、誰だ?」

「俺は、誰だ?」

「私は、誰だ?」

ここは、いったい、どこなのだろう?

自分を自分だと認識していた世界は、どこに行ってしまったのか?

あなたは、鏡を見て、何が見えますか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

あなた、見えてるんですよね? ホラー短編集 紙緋 紅紀 @efunonifu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る