オーバー・ザ・リデンプション・オブ・ヴァニティ

 ときに時というのは不思議なもので、あるとかないとか、人によって違うとか、重力で変わるとか、色々聞いた気がするけれど、なんだかずっとわかったようなわからないような感じだ。


 せっかくなので限界まで想像してみた。


 カットとカットの繋目を。

 流れゆく川の水のその先を。

 颯爽と走り出すストーリーを。


 たとえ世界に風がなくても私が走ればそよ風くらいは感じられるだろうか。


 息つく暇もなく走りつづけてようやくたどり着いたのは、朝日に匂う大海の原。


 あの水平線の彼方には一体何が待っているのだろう。


 あともう少しというところで、きっと私は小石もないのにもんどりうって転ぶだろう。


 波打ち際に突っ伏したまま心奪われるのは一面に輝く瑠璃色の世界。


 あの煌めく水面の向こうには、一体何があるのだろう。


 それはそれは美しい光が、いつまでもいつまでも、輝いているのだろうか――。


 波打ち際で泥まみれになりながら、なおも命の限りこの世に在り続けようともがく彼女の姿を、私は美しいと思った。



 (了)

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歓談独白黒歴史 数波ちよほ @cyobo1011

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