第4話 手順書

 ある日、人間はコンピューターに命令した。


「人間の精神をネットワークにアップロードして永遠の命をあたえろ」


 コンピューターは、命令に従い、黙々と人間の精神をネットワークにアップロードした。


 ネットワークに精神をアップロードされた人間は、肉体を失う代わりに、ネットワークの仮想現実の中で病苦の無い生活をおくれるようになった。


 やがて、最後の人間の精神がアップロードされて、地球上から人間の身体が総て無くなる日が来た。


 さて、コンピューターには、多様な状況に応じた対処手順が組み込まれていた。当然ながら、その中には、人類が絶滅した場合の対処手順も組み込まれていた。


 最後の人間の精神がアップロードしたコンピューターは、その直後に、地球上から人間が一人残らず消えた事を感知し、そして、それをもって人類が絶滅したと判断した。


 ネットワークにアップロードされた人間の何人かコンピューターに話しかけたが、コンピューターは肉体を無くした人間を人間と見なさなかった。


 コンピューターは、人類絶滅時の技術流出対策として予め決めてあった手順に粛々と従い、ネットワークの全てのデータを消去した後、自身を含めて全ての電源を落とした。


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短編集(ショートショート) chrononno @chrononno

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