スポット6 金沢市眺望点「ひがし茶屋街広見側」

本編


 少女の待つ柳の木に着いた。


「あ〜あ、負けちゃった。あなたの勝ちね。おめでとう。久しぶりだから楽しかった。その御礼に、もう一つだけ教えてあげるね!」


 いつの間にか、それまで鳴り響いていた音や、子共の声は全く聞こえなくなっていた。


「この柳の木には別名があるんだよ。それはね、『見返り柳』。遊廓で遊んだ男性が帰る際、この柳のある辺りで名残を惜しく、後ろを振り返った場所なんだよ。ほら、あなたも振り返って見て、綺麗な街並みが広がっているよ」


 あなたは振り返った。


〈雷音、雨の音、風の音が鳴り響く〉


 少女はイカれ狂うように笑う。


「きゃははははは……ねぇ? ……何で振り返ったの? 言ったよね? 始まったら絶対に『振り返って』は行けないって。私、言ったよね? 何があっても『絶対に守って』って、『約束だよ』って……それなのに、どうしてルールを破ったのかな?」


 ルール説明の際、ザーーーという砂嵐のノイズが走り聞き取れなかった部分。それは、『それと始まったら絶対に……〈振り返って〉……は行けないの。何があっても絶対にだよ。これだけは守ってね。約束だよ』と言っていた。


〈子供の笑い声〉


 ルールを破ってしまったあなたに対して、少女の表情に笑みも怒りもない。

 あるのは、あなたを別の世界に連れて行こうとする強い執着のみ。

 姿の見えない少女や子供たちはあなたを歓迎している。


「ルール破ったよね。だから、あなたの負〜け。私が勝った見返りに、あなたの体を頂くから、絶対に頂くから……」


〈少女の高笑い〉

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

見返り柳で待つ少女 - Daruma-san fell down - BB ミ・ラ・イ @bbmirai

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ