スポット5 宿 陽月(街灯前)

本編


 あなたは子供たちに手を引かれ『宿 陽月』の前まで連れてこられた。


 その店の前には、一本のガス灯。和風の建物が立ち並ぶ茶屋街。そこにあるガス灯は、どこか洋風な感じがする。そこまで古くない寧ろ新しいそれは、平成元年に修景工事があり路面を石貼りにし、無電柱化のように電線を地面に埋め電灯からガス灯に変えたようだ。


 そんな見通しの良い景色を眺めていると、少女が声を掛けてくる。


「それじゃあ一緒に遊ぼうね。やる遊びは『だるまさんが転んだ』だよ。やったことあるかな?」


 少女は、一緒に遊べることを嬉しく思っている。


「念の為、ルールを説明するね。一度しか言わないから、ちゃんと聞いててね」


 少女は、ルールを説明し始めた。


「『始めの一歩』と『走る』のは禁止ね。ゴールは(一本だけ立つ)『柳の木』だよ。


『だ〜るまさんがこ〜ろんだ』の間に動いてね。次の合図が聞こえるまで絶対に動いたらダメだよ。


 それと始まったら絶対に……〈ザーーーという砂嵐のノイズが入る〉……は行けないの。何があっても絶対にだよ。これだけは守ってね。約束だよ。


 柳の木に辿り着いたら勝ち。動いてしまったら負け。ルールを一つでも破ってしまっても負けだよ。いい? わかったかな?」


 説明されたあなたは、腑に落ちない表情をした。


「あっ、そうそう。鬼について説明してなかったね。鬼は私がやるよ。私が待つ柳の木まで来てね。絶対だよ」


(余韻)


「それじゃあ、準備はいいかな?」


(余韻)


「うん。それじゃあ、始めるよ」


(余韻)〈ノイズ音、格子を叩く音、子供の笑い声が聞こえる〉


「だ・る・ま・さ・ん・が、こ・ろ・ん・だ(約8秒)。絶対に動いちゃダメだよ。ダメだからね」


(余韻)〈ノイズ音、格子を叩く音、子供の笑い声が聞こえる〉


「だ〜るまさんが、こ〜ろんだ(約5秒)。動いてないかな? まだ遊びたいから動かないでね。約束だよ」


(余韻)〈ノイズ音、格子を叩く音、子供の笑い声が聞こえる〉


「だるまさんがころんだ(約3秒)。ふふふっ、早すぎたかな? みんなも動いてないよね〜?」


(余韻)〈ノイズ音、格子を叩く音、子供の笑い声が聞こえる〉


「だ〜るまさんが、こ〜ろんだ(約10秒)」※ゴールまで行かせる。


 あなたは、柳の木まで辿り着いたのだった。

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