君の幸せを願っているけれど。

第1話 君の幸せを願っているけども

一目惚れではなかった。

世にも珍しいわけではなく、

君と過ごす時間が増えて

『あ、好きかも。』『君と幸せになりたい』

とそう思った。

友達としてではなく愛する対象として。

私達は共通の仲の良い友達が数人居て、

その空間もとても楽しいものだった。

その中で私と貴女は特段趣味や嗜好が被ることが

多くて。

『気が合うよね。』そうお互いが認識するまで

時間はそうかからなかった。

たくさんバカ話もして、

悩みや心の奥の感情もさらけ出していた私達。

いつしか二人だけで話すことも多くなって。

ある時幼馴染と付き合うことになったと

話してくれた。

皆でお祝いして幸せいっぱいだった。

彼女が可愛いと時折惚気話を

彼女が聞かせてくれた。

あの頃はただ貴女の幸せを願っていた。

だけど貴女と過ごす日々が増えて二人の時間が増えて、これは好きなのかもしれない。と自覚して。

今まで気になる人はできても好きな人が

できないことを繰り返していた私は

こんなに腑に落ちるものなんだと

少しばかり驚いた。

次第に貴女の連絡を待つようになって、

ふとした一言で嬉しくなって、

恋人というカテゴリーを

除いての発言だっただろうに

良いように勘違いして。

貴女に彼氏がいたらよかった。

まだ諦めがついたかもしれない。

だけど現実は残酷だ。

恋人がいるから残酷なのではない。

貴女には彼氏ではなく彼女がいたからだ。

多種多様の世界で差別をしたいわけでもない。

ただ彼氏だったらきっと友達止まりだろうと、

恋愛対象にすら入らないと考えることが

できたかもしれない。

だけど、貴女には彼女がいるのだ。

貴女と私と同じ性別の。

こんなに悲しいことはあるのだろうか。

私にも可能性があったじゃないか。

先に想いを伝えていれば私も

チャンスがあったのではないか。

この感情とは別物だ。

私が好きになった頃には

幸せそうな貴女がいたのだ。

だからだ。倦怠期でも、

喧嘩をしているわけでもない。

きっと順風満帆だろう。

だから私が入れる隙間なんてないのだ。

私にも可能性はあるのにないのだ。

これっぽっちも。

貴女の幸せを願っているけれど、

貴女達の幸せを願える

気持ちが私にはあるのだろうか。今すぐ別れて

私のもとに来てほしいのではない。決して。

幸せを願っていることは確かなのだ。

友達として、良き理解者として一番になれても、

本当の一番にはなれっこないのだ。幼馴染という

長き時間を得てきた貴女達の関係性に

私は勝てないのだ。

どんなに愛していても。

君の幸せを願っているけども

あわよくば私と幸せになってくれないかな。