三匹のこねこ

相沢A太郎

三匹のこねこ

 とある世界のおはなし。


 お母さん猫と3匹の子猫がいた。ある日お母さん猫が言った。


「ここは食べ物が少ないから皆は生きていけない。お前たちはここを出て幸せをお探し」


 そこで3匹の子猫はそれぞれに旅立った。




 はじめに旅立った子猫は豊かな森にたどりついた。そこは食べる物にも困らず、木々が雨風から守ってくれる。


「なんて素敵な場所なんだ。ぼくは幸せものだ」


 子猫はお腹がすいたら狩りをし、お腹がいっぱいになったら寝て過ごした。おかげで丸々太った猫になった。


 そこに腹ペコ狼がやってきた。狼は丸々太った猫を見つけると舌なめずりをした。


「狼さん、ぼくを食べてもまたすぐお腹がすくよ。それより仲良くすごそうよ」


 丸々太った猫は必死でうったえたが、腹ペコ狼の耳には届かない。


 そしてあっという間に食べられてしまった。




 次に旅立った子猫も豊かな森にたどりついた。そこも食べる物にも困らず、木々が雨風から守ってくれる。


「なんて素敵な場所なんだ。ぼくは幸せものだ。がんばってこの森の王様になるぞ」


 子猫はお腹がすいたら狩りをし、お腹がいっぱいになったら体を鍛えた。おかげで強い猫になった。


 そこに腹ペコ狼がやってきた。狼は強い猫を見つけると舌なめずりをした。


「狼さん、ぼくは強いからやっつけちゃうよ。それよりも仲良くすごそうよ」


 強い猫は話しかけたが、腹ペコ狼の耳には届かない。


 しかたなく強い猫は戦ったが、猫がどんなに強くても狼には勝てない。あっという間に食べられてしまった。




 最後に旅立った子猫も豊かな森にたどりついた。そこも食べる物にも困らず、木々が雨風から守ってくれるが、森の奥には虎が住んでいた。


「なんて素敵な場所なんだ。ぼくは幸せものだ。でも虎さんは怖いな、仲良くなれないかな」


 子猫はお腹がすいとき以外も狩りをし、せっせと虎のもとに獲物を運んだ。おかげで虎と仲良しになった。


 そこに腹ペコ狼がやってきた。狼は虎と仲良しの猫を見つけると舌なめずりをした。


「狼さん、ぼくは虎さんと仲良しだから、ぼくを食べようとすると虎さんが怒るよ。それよりも仲良くすごそうよ」


 虎と仲良しの猫は一生懸命説得したが、腹ペコ狼の耳には届かない。


 しかたなく虎と仲良しの猫は虎に助けを求めた。狼も虎にはかなわない。あっという間に逃げてしまった。




 それからも虎と仲良しの猫は、虎のもとにせっせと獲物を運んだ。虎が不機嫌なときはイジメられたりもしたが、それでも普段は仲良く平和にすごした。


 いつしか虎と仲良しの猫は家族をもち、多くの子供も生まれ、その子たちも大きくなり、幸せの中で天国へと旅立った。


 残った猫たちも幸せに暮らしたが、彼らは虎が嫌いだった。だからいつしか虎に獲物を運ばなくなった。


 あるとき腹ペコ狼がやってきた。狼は猫たちを見つけると舌なめずりをした。


 猫たちは仲よくしようと必死に話しかけたが、腹ペコ狼の耳には届かない。何匹かがあっという間に食べられしまった。


 しばらくして腹ペコ虎もやってきた。虎は猫たちを見つけると舌なめずりをした。


 猫たちは仲良しだったと必死に話しかけたが、腹ペコ虎の耳には届かない。何匹かがあっという間に食べられしまった。




 それでも森には十分な食べ物があったので、猫たちはそこを離れなかった。


 でもいつまた腹ペコ狼が、腹ペコ虎がくるか分からない。


 だから昼間は木の上に隠れて、夜にこっそり狩りをするようになった。


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三匹のこねこ 相沢A太郎 @AtaroA

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