第3話 俺の理想の存在が隣にいる!

「どうかな?」


 街中を後に星野優花里ほしの/ゆかりの家に到着し、数分が経過した頃合いだった。部屋から着替えのために立ち去っていた彼女が部屋に戻って来たのだ。


 白石響輝しらいし/ひびきは彼女の部屋にいて、床に座って待っていたわけだが、扉から現れた優花里はコスプレ衣装に身を包み込んでいたのである。


 今まさに、二次元から飛び出し、爆乳なアニメキャラが響輝の視界に佇み存在しているのだ。


 普段から読んでいる漫画に登場するキャラそのものと言っても過言ではなかった。


「私、結構頑張って着てみたんだけど……どうかな?」


 優花里は恥じらいを持って、再び話しかけてくる。


「いいと思うよ」


 響輝は心臓の鼓動を感じながらも、優花里の姿に魅了されつつあった。


 視線は、その爆乳にばかり向かっていたのだ。


「もう、さっきからどうしたの? ボーッとして」

「……ごめん、いや、なんていうかさ」


 響輝は視線をキョロキョロさせていた。


 動揺を隠しきれていない。


「やっぱり、この衣装は気になる?」


 優花里は距離を詰めるように近づいてきて、響輝の目線に合わせるように目と鼻の先でしゃがんだ。


 数センチ先には、その豊満な胸が見える。


 それに圧倒されつつも、響輝は唾を呑む。


 ヤバいって、こんな近距離だと……。


 一応、優花里はコスプレに身を包み込んでいても、やはり、そのデカさは隠しきれていない。


 アニメキャラのコスプレの露出度が高すぎて、目のやり場に困る。


 その上、彼女が少しでも動けば凄く揺れるのだ。


 少しでも、微妙にでもズレれば、見えてはいけないピンク色のモノまで見てもおかしくなかった。


「やっぱり、白石さんの願望通りじゃなかった感じかな?」


 優花里は不安げに首を傾げていた。


 そんな事はない。


 もはや、想像していたよりも、かなりリアルであり、本当に二次元世界から出てきたと言われても信じてしまうほどである。


 それほどに、大差ないクオリティなのだ。


「いや、十分だよ。それよりも」

「何かな?」

「えっと……」


 目の前には爆乳があり、彼女が反応するたびに揺れ動いている。


 私服からだとわからなかった部分までもがコスプレ姿の影響で鮮明になっていて、視線をどこへ向ければいいのか戸惑う。


「私、なんでも見せるよ」

「み、見せる?」

「元々……そういう約束だったものね……私、私が何でもするって」


 そう言って優花里は自身の胸元に手を当てていた。


 彼女の手の平でも、すべてを包み込むことができないほどの大きさがある。


「なんでもって……」


 響輝は目を白黒させ、その大きな膨らみをなんでもしてもいいと思うと興奮が止まらなくなった。


「で、でも、そ、そう言うのはいいというか」


 心の奥底では、揉んでみたいし、触ってみたい。


 それに、それ以上も――


 けれど、羞恥心が邪魔して、それ以上セリフを口にはできなかった。


 消極的というか、心が弱いというか、いざという時にどうしようもない奴だなと自分の事を下に見てしまう。


「私はそういうのが好きなのかなって思ってたんだけど。白石さんは、そういうの期待していなかったの?」

「お、俺は――」


 返答に困る。


 本当は素直になりたいが、彼女に嫌われたくないという思いもある。


「私ね、白石さんには助けてもらったし。そういうのもいいかなって」


 優花里は淡々と話してくれる。


「俺は星野さんと一緒に過ごせればいいというか。一先ず、お、俺の隣に来てくれるかな」

「わかったわ」


 優花里はコクンと頷いて、響輝の右隣に腰を下ろしてくれ、距離を詰めてきたのだ。


 彼女の肩と肩が触れ合ってしまう。


 響輝の心臓の鼓動はさらに高まっていき、肌まで熱く火照り始めてきていたのだった。


「白石さんは、どういうところが好きなの?」


 急に問われる。


 響輝はビクッと体を震わせてしまった。


「どういうところ?」

「そうだよ、漫画のキャラのことについてって事。私がコスプレしているキャラが好きなんでしょ?」

「そ、そういうことか」

「え? なんだと思っていたの?」


 優花里の頭にはクエスチョンマークが浮かんでいる状況だった。


 彼女は少し天然らしい。


 意味深な意味で聞いてきたわけではないようだ。


「まあ、性格とか?」

「性格なの?」

「う、うん」

「お姉さん的な性格のキャラが好きってこと?」

「まあ、そうかな? 多分、そうなると思うよ」

「そうなんだ。お姉さん系か。じゃあ、私じゃ、上手く表現できていなかったよね?」


 優花里は肩を落とし、ショックを受けているようだった。


「そ、そんな事はないよ。十分、似合っているから。コスプレじゃ、すべては表現できないと思うし。俺、そこまで気にしないというか。着てくれただけでも。本当に助かったというか」

「助かった?」

「え、まあ、助かったという表現でいいのかわからないけど。まあ、似合っているってこと。そういう事だから」


 響輝は早口でその場を切り抜けた。


「ありがと」


 突然、優花里からの感情のこもった返事があった。


「え?」

「私、あまりコスプレをしてもそこまで似合うのがなくて、今まで誰にもコスプレが趣味とか言えていなかったの」

「そうなの? 普通に他のも似合いそうだけど」

「でも、私、胸が大きいから」

「え、あ、まあ、それは身体的な問題だからしょうがないと思うから」


 響輝は反応しづらかった。


 そもそも、そんなにもデカいモノを持っているなら最大限に生かせると思う。


 けど、本人の前では口にはしなかった。


「それにね、私。アニメとか、漫画も好きなんだけど。クラスメイトの中では言い出しづらいじゃない」

「そ、そうだね」


 響輝らが通っている学校のクラスは比率的にも陽キャが多い。

 だから、休み時間中に、アニメなどのオタクトークというモノがないのだ。


 ゆえに、響輝はクラスで浮いた存在になっていた。


 存在感が薄いというか、人と関わる回数が少ない分、他人から認識されず結果として友人も作りづらいのだ。


「……あのね、私の方から言うのも変かもしれないけど。友達になってほしいって思って。お礼する側なのに、ごめんね。無理だったらいいんだけど」

「……いいよ」


 響輝は勇気を持って、優花里からの誘いをチャンスに変えた。


「本当に⁉」


 優花里はパッと視線を向けてきた。


「うん、俺も趣味で話せる人がいなかったら、俺で良ければ。むしろ、友達になってほしい!」


 響輝は勢いに任せて言い切ったのだ。


「こんな私でも良いの?」

「うん」

「白石さんが好きなキャラのコスプレをしたから?」

「違うよ。俺は星野さんのことが……」

「え?」

「いや、まあ、簡単に言うと友達になりたかったから」


 まずは、友達として付き合っていきたい。


 あわよくば、本当の恋人として――


 響輝は彼女と友達になり、これからの高校生活は楽しく生活していきたいという妄想を膨らませるのだった。


 告白はその後からでも遅くはないと思う。

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学園で一番の爆乳美少女を助けたら、×××な恩返しをされるようになった件 譲羽唯月 @UitukiSiranui

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