世間には、世界には侵してはいけないものがあります。小説を書く上でも侵してはいけなものがあります。
本エッセイは著者が自分の過ちを明かすもの。これを公にすること自体リスクを孕むでしょうが、小説書きにはありがたい戒めです。
しかし、これで分かった、とはなりません。
世界には、このような侵してはいけないものがいくつあるのか。総数は正確には分かりませんし、一人の人間が全て把握していることは有り得ません。
もしかしたら、貴方も明日に別のものを侵すかもしれません。評者は、もしかしたらもう侵しているのかもしれません。
落とし穴は落ちるまで分からない、と言ってしまえば運任せでしかなくなります。慎重に。とにかく慎重に。地雷原を歩くが如くに。
知らなかった自分を恥じます。