我天心酔の最終回!己が道、求め進むが万物流転! その⑦
このターン、リーシャ先輩は水平思考クイズの出題に失敗した。
スピリットの召喚コストを軽減する領域効果は適用されない――加えて、先輩の場にいる《水舞台の花影、ガーベラ》はスピリットを墓地に送れないようにする凶悪なデメリット効果を持っているはず。
「リーシャ先輩のデッキは水属性のエンシェント・スピリットを主軸にしながら、[水平思考宮殿シャドウストーリーズ・ウォーターパレス]の領域効果で召喚コストをゼロにして連続展開するデッキです。領域効果を使えなければ、ガーベラのロック効果によってエンシェント・スピリットは呼べないはずです!」
「それは――どうかな?」
先輩は決闘礼装を操作して、墓地から一枚のカードを取り出した。
カードの名は《水舞台の蕾、ステイメン》!
「それはリーシャ先輩がファースト・スピリットとして最初のターンに召喚して、
「私はステイメンの効果を発動するよ。墓地のこのカードをゲームから除外することで、私はこのターンに1度だけ、スピリットの召喚コストを墓地から除外して代用とすることができる」
リーシャ先輩は更に墓地からカードを取り除いた。
「エンシェント・スピリットの召喚には2体以上のスピリットまたはグレーター・スピリット1体かエンシェント・スピリット1体がコストとして必要――私は墓地からエンシェント・スピリットである《水舞台の花役者、ゼフィランサス》を除外することで召喚コストを代用しよう」
「つまり、先輩が手札から召喚するスピリットは……」
エンシェント・スピリットということだ!
「あはは。正解だよ、ユーア君。
さぁ、私のとっておきを披露しよう――」
リーシャ先輩がサイドサークルにスピリット・カードをセットすると――フィールドには匂いたつような紫色の花弁を思わせる優美なドレスが咲き誇った。
先輩は舞台に立つ役者の如く――
手のひらを花びらとするように舞わせながら唱える。
「切望の空に吹き荒れる花嵐よ。
勝利者なき星空に、蒼く輝く星界の焔を灯せ!
影に立つ
《水舞台の大輪、デンドロビウム》!」
新たな真打の登場に、亀甲の
「これが、先輩の切り札……!」
先攻:リーシャ・ダンポート
メインサークル:
《「
BP1111(+6250UP!)
=7361
サイドサークル・デクシア:
《水舞台の花影、ガーベラ》
BP2750
サイドサークル・アリステロス:
《水舞台の大輪、デンドロビウム》
BP3500
領域効果:
[水平思考宮殿シャドウストーリーズ・ウォーターパレス]
後攻:ユーア・ランドスター
メインサークル:
《移り気なリョースアールヴ》
BP2500
サイドサークル・アリステロス:
《聖輝士団の一番槍》
BP1900
私はデンドロビウムのBPに驚愕した。
「BP3500……!?」
「このカードは特別なルートから手に入れた、正真正銘のレアカードでね……名実共にデンドロビウムこそが、我がデッキの決戦兵力というわけさ!」
先輩の分身であるモック・タートルは彼女のフィールドに存在する水のエレメントを持つエンシェント・スピリット全てのBPを受け継ぐ。
当然ながら、デンドロビウムの誇る3500ものBPはモック・タートルのBPに加算されて、そのBPは7361にも達していた。
「くっ……!」
「チャンスは最大限に活かすのが私の主義でね。
バトルだよ、ユーア君!」
リーシャ先輩は攻撃宣言をおこなった。
「《水舞台の大輪、デンドロビウム》でメインサークルを攻撃……ラビアン・ローズランチャー!」
大輪のマーメイドが歌に乗せて魔法を唱えると、無数の花弁が嵐となって私のメインサークルを守っていたイタズラ妖精を襲撃した。彼我の戦力差は絶大……リョースアールヴは破壊されて、戦闘の余波を受けて私のシールドは消し飛んだ!
「きゃあああーっ!」
先攻:リーシャ・ダンポート
メインサークル:
《「
BP1111(+6250UP!)
=7361
サイドサークル・デクシア:
《水舞台の花影、ガーベラ》
BP2750
サイドサークル・アリステロス:
《水舞台の大輪、デンドロビウム》
BP3500
領域効果:
[水平思考宮殿シャドウストーリーズ・ウォーターパレス]
後攻:ユーア・ランドスター
【シールド破壊状態】
メインサークル:
なし
サイドサークル・アリステロス:
《聖輝士団の一番槍》
BP1900
「い……痛い。ううっ……」
覚悟はしていたはずなのに、それでも涙がこぼれてしまった。
初めて体験する「闇」の
「闇」のエレメントが支配するこのフィールドでは、プレイヤーへのダメージは実体化する――ウルカ様たちに聞いてたとおり――だけど、体験するのは初めて。
夏休み前の「旧校舎」で起きた
「(つらい。痛いよ。
ううん、それでも。
「(それでも、だよ。ウルカ様も……イサマルさんも。こんな酷い目に遭って、それでも、必死に戦ってたんだ)」
――だから。
「私も、戦う。戦わなきゃ、ダメだ」
「ユーア君……」
「リーシャ先輩も言ってましたよね……私が主人公だって。誰に言われずとも、私、わかってました。私は『光の巫女』だから。「闇」を打ち倒し、世界を救うヒロインだって……そんなこと、私が一番わかってたんです」
その重圧から逃げようとして。
大事な人には『光の巫女』じゃない私も肯定してもらえた。
だから、私は逃げずに戻ることにした。
『光の巫女』の力だって、悪いことばかりじゃない。
エルちゃんと通じ合えたのも力のおかげ。
お兄様とも、以前より深く思い合えることができるようになった気がして。
何よりも――
大切な、ウルカ様の助けになることだって出来た。
そうだよ、今だって……!
「リーシャ先輩。これで私のメインサークルは
「あ、あはは。何を言うかと思えば……そうだよ、これで私の勝ちさ。君の物語はここで最終回を迎える――ユーア君は我ら「
「先輩は……何を手に入れるんですか?」
「えっ」――と、リーシャ先輩の表情が消えた。
「
リーシャ先輩が「闇」に付け込まれた原因。
それを知らなければならない。
私が勝つために必要な条件になるはず。
「(でも、私は駆け引きは得意じゃないからなぁ)」
――だったら、こうするしかないか。
私は両手を広げた。
「さぁ、リーシャ先輩。私を攻撃してください」
「……な、何のつもりだい?」
「これは罠です」
「罠だって……!?」
「はい。私は先輩に罠を仕掛けています。ですから、それを警戒してターンエンドしてもかまいません。そしたら、次のターンで私は先輩に勝ちます。ボコボコです!」
「ふ、ふざけているのかーっ!?」
「そうかも……」
どのみち、ぶつかり合うしかないんだ。
「カウントしますね。10数え終わってもリーシャ先輩が攻撃しなかったら、私のターンです。はい、10、9、8、7、6……」
「ちょっと待って……く、くそっ!」
リーシャ先輩はあわてて攻撃宣言に移る。
「いけっ、ガーベラ!
先輩の指示を受けたマーメイド・スピリットが、ガラ空きとなった私のサークルに迫る――この攻撃が通れば、リーシャ先輩の勝ち。
絶体絶命。大ピンチ。この状況を――私は待っていた!
視界が広がる。
時間の流れが遅くなり――
思考は加速して、精神と精神が細い糸で繋がる。
『光の巫女』の力は人の心を繋ぐ力だと、シオンちゃんは云っていた。
エルちゃんとの
誰にも言えなかった本音と恐れ。
私と同じく、自身に課せられた「役割」の中で苦しんでいたエルちゃん。
ハイ・ボルテージの瞬間、私の心は対戦相手と繋がることができる!
「ごめんなさい、先輩。
リーシャ先輩の中に……私、入らせてもらいます!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます