「制限カード」発表

長かった禁止制限改訂もいよいよ大詰め。

ウルカは1枚のカードを手にした。


「最後に発表するのは「制限カード」ね。

 これは改訂後はデッキに1枚しか入れられないわ」


果たして、第一回の「制限カード」として規制されるカードは何なのか?


イサマルが「とはいっても、なぁ。「制限カード」については……読んどる人たちも、なんとなくは予想つくんちゃう?」と言い、それにユーアも「そもそも……たくさんある方がおかしいカードですもんね……」と答える。


ウルカも苦笑した。




そう、これは世界に1枚しかないはずのカード。

幾千年をも生き、いくつもの国に災厄をもたらした存在。


『スピリット・キャスターズ』の歴史、その始まりの時から全てのカードの頂点に立つ、至高の座に位置する三柱の神が一つ。


手にした者を操る禁断のカードであり、同時に

この物語で最初の「闇」の決闘者デュエリストでもある。


進撃の『トライ・スピリット』――

傾国の千年狐狸精。


別名をして、その名をと呼ぶ!




ウルカは手にしたカードを指先でひっくり返す。

今回、「制限カード」となったカードの名は――



「エンシェント・スピリット、

 《シルヴァークイーン・ナインテイルズ》!」



《シルヴァークイーン・ナインテイルズ》

種別:エンシェント・スピリット

エレメント:風

タイプ:アヤカシ

BP4000

効果:

【鉄壁】

(このカードは《殺生石》以外のカード効果では配置できない)

召喚・または配置時に、このスピリット以外のフィールドの全てのカードを破壊する。

各ターンの終了時、またはこのスピリットがフィールドから墓地に送られたとき、自分の墓地から好きな数のスペルカードを選んで手札に加えてもよい。



イサマルは「まぁ、そうなるわなぁ」と云った。


「ほんまは世界に1枚しか存在しないカードなんやから。

 規制は妥当やね」


「そ、そうですね……!としか、言えません!

 特に、コメントは無いかと!」


「強いて語るとしたら、これも「禁止カード」になった2枚と同様にループコンボ規制の意図を組んだ改訂ってあたりかしら。《傾国反魂香-復活の千年狐狸精-》はもちろん、他のスペルカードと組むことでも簡単に使いまわしが可能となりそうね」


「禁止カード」となった《巫蟲の呪術師》や《決闘六歌仙シケイダ・マール》については1枚でループコンボの要となってしまうが――

《シルヴァークイーン・ナインテイルズ》については、同名2枚が揃わなければ基本的には「強力なスピリット」止まりであるために「制限カード」でとどまった、と見るべきだろう。


ウルカは「……というか。伝説の『トライ・スピリット』をしても「強力なスピリット」止まりなのに、その上をいく「禁止カード」の2枚は何なのかしら……!?」と頭を抱えた。


ところで――


「本編では、増えてしまった銀毛九尾のカードについてはイサマルくんが処理した……ってことになってたけれども。具体的にはどうやって処理したの?」


「あー、それについては今後の本編で描写する予定らしいから、番外編ここではエピソードを伏せてターンエンドしとくわ。ま、しばらくは出てくることもないやろ」


「そう……じゃあ、今のところはイスカの本国にある1枚が、暫定的には世界で唯一の《シルヴァークイーン・ナインテイルズ》ってことになってるのね」


ユーアは「あの、そもそもの話なんですが」と手をあげる。


「《シルヴァークイーン・ナインテイルズ》ってイスカの守護神で、国の宝なんですよね……?そんなものがいっぱいあったら、なんというか、とんでもないことになるのではないでしょうか!?」


「へへへ。実際に「とんでもないこと」になるみたいやで~?その辺は、第二部をお楽しみに、ってとこやね」




「――さて。これで第一回の禁止制限改訂は以上ね。

 まとめてみると、こんな感じよ↓」



『スピリット・キャスターズ』執筆レギュレーション

第一回禁止制限改訂(施行日は2024/09/17~)


「禁止カード」

《巫蟲の呪術師》

《決闘六歌仙シケイダ・マール》


「制限カード」

《シルヴァークイーン・ナインテイルズ》



ウルカは改訂のリストを眺めた。


「こうしてみると、規制を受けたカードは全てループコンボにまつわるカードばかりね。施行日が第二部の連載開始に合わせているところを見ると、第二部はループコンボの活躍が少ない環境になりそうだわ」


「せやね。第一部も、第六章と第七章では1決闘デュエルで2ループ3ループが当たり前やったからねぇ。そのあたり、第二部の決闘デュエルは取っつきやすい内容になればええんやけど」


「あの、すみません。ループと言えば……私の《銀星号シルヴリントップ》は規制しなくて大丈夫なんでしょうか?いや、規制されないならありがたいんですが!」



銀星号シルヴリントップ》――

第六章で活躍したコンストラクトカードである。


ワルキューレに装備されているとき、装備されたワルキューレの戦闘破壊を無効にして、デッキからカードを墓地に送ることで再び攻撃できる効果を持つ。

本編では、ユーアちゃん自身がワルキューレになることで自ら攻撃と敗北を繰り返して、バトルするたびにBPを上昇させる《光輝あれハヴァマール》とのコンボによって無限にBPを上げていった。



イサマルは思案する。


「……ユーアちゃんの《銀星号シルヴリントップ》なら大丈夫やないかなぁ。

 なぁ、ウルカちゃん?」


「ええ。あれはエルちゃんの発動した《箱中の失楽パンドラ・ボックス》――「壺中天」の特性によって、ユーアちゃんが自爆特攻による敗北を回避したことで発生したループですもの。汎用性も再現性も低いし、問題ないと思うわ」



自分のカードと相手のカードを組み合わせることで発生するコンボ――カードゲームでは俗に「友情コンボ」と呼ばれるやつだ。


エルちゃんの場合は、決闘デュエル後にユーアちゃんと友情が芽生えたのだから……ある意味では本物「友情コンボ」かもしれない。



ウルカは「うふふ」と笑った。


「そういう意味では、初代パラサイトループの立役者である《魔素吸着白金パラジウム・パラサイト》もそうね。あれもループコンボのキーパーツではあるものの、アスマの《バーニング・ヴォルケーノ》と組み合わせないと真価を発揮しない……やはり「友情コンボ」前提のカードは危険性がワンランク落ちるわね」


ユーアは頷く。


「そうですね……それに《魔素吸着白金パラジウム・パラサイト》の場合は、コンボが成立する前にドローしたら強制配置されちゃうので、召喚ロック効果が発生して取り返しがつかなくなるリスクがあります。アスマ王子みたいな運命力に恵まれた人ならともかく、ウルカ様が扱うのは……」


グサリ、とウルカは精神ダメージを受けた。


「うう……!第二部ではユーアちゃんに頼らずに、私も自力でフォーチュン・ドローを習得してみせるわ……!なにせ、イサマルくんにだって出来たんですもの!」


「言うてもなぁ。ウチ、これでも天才やし?

 へへへ!」


「くっ……!見てなさいよぉ……!」




そういうわけで、これで第一部も終わり。


次なる章で待ち受けるのは――

物語の終わりを望む、謎の集団。


超・幻想集団「堕ちたる創作論イディオット・フェアリーテイル」!


いよいよ本格的に「闇」の侵攻が始まるのだ。


立ち向かうのは『光の巫女』と、

彼女と絆を結んだ元・悪役令嬢である転生者。



第二部も、乞うご期待ください!



「新たな敵との血湧き肉躍るバトルも……

 カードゲームならよくあること、よね!」



(まだ見ぬ物語に続く!)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る