助言とレポート

多田先生の後について行って休憩室の奥にあるテーブルと椅子が置いてある場所に行く。

僕達の足取りはやや重い。

多田先生が椅子に腰をかけてから僕たちにも座るよう促す。

『さて、初日からお前たちの所に来たのもお前たちが、ここの職員さん達に迷惑をかけてないかの確認の為に来たのだが、、、』

鋭い目つきで僕たちを見る。その目つきを見たら黙っちゃうよ。

『め、迷惑だなんてかけてませんよ。ちゃんと真面目に実習してますって』我慢できずにカントが返答する。

『ほー。迷惑はかけてないか。そうかそうか。真面目にやってるなら問題ないな』

良かった。真面目に実習してること先生は分かってくれたんだな。

『ならば、何故脱衣麻雀をしていたのかをじっくり聞かせてもらおうか』

あっやばいこの人、マジで怒ってる。

『指導者さんからさっき聞いたんだが、涼、カント。お前たち二人は利用者を巻き込んで脱衣麻雀をしていたそうだな』

麻雀のこと伝わるの早い。ついさっきのことじゃないか。ここはなんとしても事情を説明しなければ。

『た、たしかに麻雀をしてました。けど、あれはちゃんとコミュニケーションの一環で始めたものです』

『コミュニケーションの一環ね。なら服を脱ぐ必要性はなんだ?』

『そ、それは。そうです。一緒にゲームしてる利用者さんだけが楽しむのではなく、他の利用者さんにも楽しんでもらいたくてやった事です』

嘘は言ってない。けして僕たちが楽しくなって脱衣麻雀を始めたわけではないから。

『なるほど。断じてお前たちが楽しくなったあまり、脱衣麻雀をしたわけではないということだな?』

多田先生の口元は笑顔だけど、目が笑ってないの怖すぎる!!

『そ、その通りでございます』

冷や汗が止まらないよこんなの。

『なら、今回は多めに見てやる。幸いにも指導者さんからも学ぶ姿勢はよく褒められてたからな』

指導者さんありがとうございます。命拾いしました。

『だが、、、次はないからな?』

威圧感が凄い。次やったら本当に実習も止められる気がする。

『、、、はい。気をつけます』

僕とカントは素直に謝り許しを得た。


『エイタ。お前も苦情ではないがな、職員さんから、妹の話ばかりしていると注意を受けた。妹の事を好きなのはわかるが実習中なのだから、もっと利用者さんのことを聞いて来なさい』

エイタ、ここでも君はシスコンなのが変わらないのね。

『し、しかし先生!妹は世界一可愛いんですよ!?その話を、、、』

どうしたんだ?エイタが妹の話を止めるなんて。

『、、、わかったな?ちゃーんと利用者さんと向き合うように』

あっ、先生の威圧に負けたのか。

『はい。ちゃんと聞きます。真面目に実習します』


『最後にアイトだが、お前はもう少し積極的に利用者さんとコミュニケーションを図れ。緊張するのも分かるが、ここで慣れておかないと他の実習でも躓くから周りを見てコミュニケーションの図り方を学びなさい』

まともだ!先生がまともなアドバイスをしてる!

いや、たしかに先生は福祉科の先生だから当然なんだけど。

『けど、先生。緊張して何を話したら良いのか分からなくて』

確かにアイトは初対面の人に慣れるまでに時間がかかる。

『話の内容か。そうだな、私も介護の仕事してる時はよく出身地の話とかして、その出身地の美味しい食べ物の話なんかよくしてたな』

『な、なるほど。他には何かありますか?』

『あとはその人の趣味だな。散歩が好き、料理が好き、食べることが好き、あと、昔やってた仕事話なんかもいいかもな』

『ありがとうございます。やってみます』

『その人に合った会話を探すことも大切だからな。しっかり周りを見なさい』

先生はアイトに助言をしてから僕たちを見渡してる。

『初めての実習だから分からないこともあると思う。指導者さんの指導を忘れずに、利用者さんの事を敬いなさい。実習が終わったらちゃんと、レポートにまとめる事。わかったな?俺は、次の生徒の所に行くから頑張りなさい。迷惑かけるなよ。』

先生は話をまとめてから席を立ち、指導者さんのところに向かった。


先生との面談もなんとか乗り切った。先生からの助言も大切にして残りの実習も頑張ろう。


先生との面談後、各々午後の実習に向かっていく。基本的には午前と変わらず利用者さんとのコミュニケーションがメインだ。

アイトのことが気になって、少しアイトの方見たら、先生から言われた通りに利用者さんとコミュニケーションを図ってる。まだ少し、緊張している感じはあるけど、少しずつ話をしてるから大丈夫そうだ。

僕も、午後からも変わらずコミュニケーションを図っていた。


実習時間残り1時間となった時、指導者さんから声をかけられた。

『そろそろ実習生さんたちは裏に戻って、今日のレポートを作成していいよ。実習時間終わるまでに僕のところに持ってきてね』

実習はただ、行うだけではなく、その日の実習の振り返りと反省、次の実習の目標立ててレポート用紙にまとめて、指導者さんに提出することになっている。

今回のデイサービス実習は三日間。そのうちの一日目のレポートだ。先生との面談で使用したテーブルのところに行って各々レポートを作成する。

僕が行った時には全員既にレポートに取り組んでいた。

『おつかれ、みんな。午後は大丈夫だった?』

僕がみんなに声をかける。みんなは少し疲れている様子だった。

『おつかれ。初めての実習だからな、そりゃ気疲れしちまうよ』

『おつかれー。俺も疲れたよ。早く妹のところに行きたいね』

『おつかれさま。先生の助言通りにやったら上手くできたけど、やっぱり慣れないから疲れるよ』

みんなも疲れてるんだな。僕もレポート作成にかかりますか。


基本的にレポートは、その日の目標に沿って達成できたかどうかだ。目標が達成できたなら、他の目標を立案することになるけど、僕が建てた目標は、「デイサービスでの役割を学び職員、利用者さんとの関係を学ぶ」だから初日達成できるわけがない。

なので目標は継続となる。

継続となる場合、出来たこと、出来なかったことをまとめる。

出来たことは。コミュニーケーションは上手くできた。

出来なかったことは、食事配膳での注意事項だな。デイサービスでの誤食防止のための、名札の確認もできなかったからな。


今回はこの二つだな。

そして最後に次の実習での目標だなこれを設定して終わり。

やはり、ここは出来なかった、食事について学ぶだな。


簡単にまとめているが書く量が多い。一時間使って少し時間が余るくらいだから結構早いペースで書かないと間に合わない。

これも、書いていけば慣れていくだろう。


僕はなんとか描き終わったけど他のみんなはどうかな?カント、アイトは既に終わってる。エイタもあと少しだな。


少ししてからエイタも書き終わった。

『さて、じゃあ指導者さんのところに提出に行きますか』

カントの合図とともにみんなレポートを持って指導者さんの元は行く。

『はい。確かに受け取りました。初日だったけど疲れたかい?』

『そうですね。やっぱり初めてなんで疲れました』

カントが指導者さんに言う。

僕も疲れたな。

『そうか。まぁ初めてだしね、疲れるよね。今日はもう上がっていいから、ゆっくり休んで明日もよろしくね』

指導者さんからの帰宅してよしが貰えた。

『本日はありがとうございました。明日もよろしくお願いします』

ちなみに始まりと終わりの挨拶は事前に先生から教わっていたので問題なくできた。


明日も実習だから今日はゆっくりと休むかな。

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僕と介護の道 @oka99

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