第壱頁
第一章 空いた手が塞がらない
~探偵のルーティン~
朝の日差しが瞼越しに俺の眼にダメージを与え、もう朝だぞ。起きろ、と言葉をかけられている感じがする。目を瞑りながらもこれは起きてしまえば太陽に負けた事になるのではとどうでもいい気持ちを持つ。
ただここで起き上がらないのは人としてどうかと思わされる。それは2度寝と言う魅惑の化け物に食い入られるのではないか?
だが化け物であると同時に2度寝とは禁断の果実でもある。
誰もが欲してしまうそれを目の前に置かれたら手に取り食べてしまうのも人としての性だろう。
たが1度も起きていない今の俺は2度寝とはまた違う悪だろう。
2度寝とは起きる意思が少しはあるが化け物に食い入られてしまった事。
1度として起きる意志を持っていない俺はそれにすら該当しないのでは無いか。
それはいけないなせめて一度は起きその上で寝る事にしよう。
その為に俺は重い瞼を上げ、天井を見つめる。それを見て俺が一番に発した言葉は、
「何処だ、ここ?」
そう、瞼を開け、陽光の攻撃を受けながらも明確に、鮮明にそんな言葉が出てきた。
見慣れない天井。
これだけ聞くとまるで誘拐されたもしくは倒れて入院した人のようだ。
だが過去を振り返っても入院した記憶は無い。と言うより全然何も思い出せない。
そもそも、今見上げている天井は明らかに病院のそれとは違うが。
なら濃厚な線は寝ている間に誘拐されてしまったということか。
とりあえず寝ている状態では何も出来ないと思い、上体を起こす。
頭を上げ、天井から部屋の内装へと視線を移す。
部屋を見れば少しは何かを思い出すとも思ったが特に何かを思い出すこともない。
だがなぜだか誘拐ではなくここが自分の家の様に感じる。
部屋全体を見渡し、人の暮らしていた痕跡があるのを見つけた為、少し前まで、なんだったら昨日くらいまで人が居たことがわかる。
部屋自体は簡易的でどこにでもあるような10畳ほどの部屋だった。
今、寝ていたベッドが入口の対角線の位置に置かれており、扉の横には本棚が、ベッドの横にはパソコンデスクがあった。
その中で一際異彩を放っている物がパソコンデスクの上に置かれていた。
それはベッドから上体を起こした今ではよく見える。それは日記だった。
俺はベッドから降り立ち上がる。
「これは?」
自分でそんなことを発していながら何故だか俺はこの日記を知っているような気がしてしまっていた。
俺は日記の初めの頁を開け、少し読んでから全てに納得が言った。
「そういうことだったのか...」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます