嘘吐きな僕等
うるえ
僕を見ない君
「ねぇ、君の最大限の幸福は何?夢…みたいな。」
「最大限の幸福?何それ、ちょっと日本語変じゃない?」
彼はそう言ってくすりと笑った後、ふっと遠くを見つめながら呟く。
「…そんなの、死ぬことに決まってるでしょう。」
僕は聞こえなかったふりをして、
「何?もっかい。」
「…いや、君といることだよ!分かってるくせに。」
彼はくしゃりと笑った。その笑顔があまりにも寂しそうで、そして───あまりにも、美しくて。
そのあまりの儚さに僕は、いつも胸が締め付けられるような気持ちになる。そのことを君はきっと知らないし、興味もない。
君はきっと、これからもずっと、そうなんだろう。僕のことを見ている様で、実際には僕なんて視界には入ってすらいない。
そんな君を、僕に興味のない君をどうしようもなく好きになってしまった僕は、これからもそうやって君の言葉を聞こえないふりをして、やり過ごすのだと思う。
「ちなみに君のは?」
「…え?何?」
「君の、最大限の幸福は?」
そう言って僕の目を静かに見つめる君は、やっぱり美しくて。その静かな瞳に吸い込まれそうになるのを堪えて、僕は言う。
「…僕の、幸福は、───」
ふっと笑って、君の目をちゃんと見つめて。君のその美しい姿を目に焼き付けながら。
「───君とこうして一緒にいられること、かな。」
「(1度でいいから君が僕を見ること、だよ)」
嘘吐きな僕等 うるえ @Fumino319
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