カルト 異常博士ユド マキ

 獣たちは、二人を取り囲んだ。逃げようとするも、なぜか獣たちはリサに興味がないようにおもえた。その時点ですべてを察した。

「リサ……裏切ったのか?」

「ごめんね……」

「何で!!」

「ユド博士との……契約なの……」

 なぜ彼女が裏切ったのか“明日リーカー”と取引をしたのかは今でもわからない。とにかく、“明日リーカー”と言われる存在は、この崩壊した世界の中枢で、コロニーを制御する人工知能のうち、もっともすぐれた上位存在である“マキ”に接触している。一説には人の姿をしているとも、完全に人の思考を読んでいるとされる。その中で最も明確に観測されているのは“彼女が未来予測演算能力がある”ということだ。


 それが強制的な支配なのか、共存関係であるのかはわからないが、人間の完全なる統治を失った人口知能は、完全に人間の世界を支配しきらないものの絶妙な均衡関係にある。そして、“明日リーカー”はマキの力を予測して、“未来予測”をして、彼らの気に入った存在に力と地位を与え、“指導者”として利用する。


 その一人こそが“異常博士ユド”だった。彼らの生まれたコロニーに住み、子供でも女でも容赦なく、むしろ弱いものにこそ依存して人体改造を行う。彼は顔をブラウン管テレビのような形状のマスクで完全に隠し、胸部は完全に中世の鎧のようなデザインのアーマーを装備している。


「お願い、聞いて……悪いようにはしないから、私は……あなたに彼の加護をうけてほしいの、彼との約束はあなたたちが純粋に私の願いを受け入れること、私の願いは……○○○○」


 頭がひどく傷んだ。その言葉を思い出そうとすると、なかなか思い出せず、今でも欠損したままだ。あるいは自分がそれを完全にしっていて、かき消しているような気さえする。自分は臆病ものではないか?“彼女”のいうように。


 今日は特に予定もないと思い出して、体をおこした。自衛のためにもっている“シールド銃”も携帯する。気分転換にコンビニに出かけることにして、スマホも手に取り、玄関をあけ、ポストをチェックする。

「まさか……ウソだろ!?」

 それは、懐かしい感触だった。コロニーを転々とし、叔父の庇護をうけ、完全にまいたはずなのに。プラスチックの薄い板状のものをとりだす、そこにはこう書かれていた。

「壊れたテレビは、叩いて直さなきゃ、目覚めろ」





 


 

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デスリセット ボウガ @yumieimaru

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