ブラックブラット(明日リーカー) リサとエリ
目が覚めると奇妙な感覚の中にいた。起きているのに寝ているような感覚。同時に昨日のことを思い出した。学校で意識を失い。目が覚めた後もぼーっとして、授業をおえて、まるで寝ぼけたまま一日が終わる。
「いったい、なんだったんだ?」
体を起こすと、昨日の現実より、昨日見た夢のほうが強烈なリアリティをもって感じられた。蜘蛛の毛並み、腹部やくちもとの少しずつ機械化した造形。サイボーグ特融の気味の悪さと半面の美しさ。
何か……特別な感覚があった。突然おしつけられた修羅場と、自分が特別な存在になったかのような感覚。と同時に、自分の卑怯さについて思いあたることがあった。
まだ孤児だったころ、自分は故郷のコロニーにいて、いくつかの子供たちのグループと仲良くしていた。大人たちは近寄ることもない“遺物街”にも立ち寄った。
あとで知ったことだが、この時代に孤児などという存在はめずらしくどんな貧乏人でもある程度の生活は維持できるようになっている。だがあのコロニーは、一人の独裁者によって隔離されていたのだ。いまでも“あの戦争”を思い出すと吐き気がしてくる。
「自分が特別なわけはない、あの時だって、彼女を犠牲にしたんだ」
リサとエリ。双子の姉妹だ。その二人がもっとも勇敢で、もっとも冷静で仲のいい姉妹だった。姉のリサは自分ににて強気で勇ましい女だ。だが自分とくらべて無鉄砲さはない。必要な時に必要な勇気をだす。エリは、少し甘えん坊なところがあり、知識で圧倒するところがあった。3人はいつも一緒に動き、“遺物街”を探索した。
いつも無鉄砲だったが、その日のリサは奇妙だった。自分の無鉄砲さをとめようともしないし、何かふさぎ込んでいる感じがあった。その時気づいていればよかった。彼女が“あの無法者たち”に未来をリークしていたことに。
あの頃、ヒッヅたちはリサの“能力”に頼りっぱなしだった。だから、それが外れることはありえないし、もちろん彼女が自分たちを売ることもないと思っていた。だから安心しきっていて、いつもの秘密基地へと向かった。コロニーの壁が崩れ、崩落した通路を通り旧21コロニー、通称“遺物街”へ。
大人が近寄らないには訳があった、放射線の影響もあるし、また、人を狂わせる電波が走っていた。実際子供でも大人でもそこに入って狂った人間は幾人もいた。
それでも僕らはよかった。そもそも未来になんて期待していなかったし、未来に期待しろというのなら、自分たちで博打を打つしかなかった。自分たち自身をいけにえにした博打を。
リサは悩みながら、僕らを案内した。秘密基地へ。そして彼女はこけむした秘密基地、くずれたどこかの庭園の端の小高い丘の上で、日の光を背にしてわらった。
「ごめんね」
その瞬間、彼女の後ろから、大勢の“獣たち”が現れた。ナイトメアブラッドとよばれる、人造の獣たちである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます