最終話 そしてまだ見ぬ未来へ……

「陽愛ちゃん、お誕生日おめでとう」


「おめでとう陽愛ちゃん、もう一歳かぁ、早いねぇー」


「うぅ、あぁう!」


「あははっ、ヒメ、おじちゃんとおばちゃんが『お誕生日おめでとう』って言ってくれて嬉しいんだね」


 今日は陽愛ちゃんの一歳になる誕生日パーティーを私の実家ですることになっていて、夏輝と私は実家に遊びに来ている。


 私達が声をかけると、パパである陽くんの膝の上にちょこんと座っている、おめかしをした陽愛ちゃんが、お気に入りのポゥさんのぬいぐるみを振り回しながらキャッキャと笑っていた。


「あー! 陽愛たん最高! 可愛いー!」


 そんな陽愛ちゃんの様子を私のパパはだらしない笑顔を浮かべながらスマホで撮影している。


「んふふっ、お姉ちゃんとお義兄さん、わざわざ来てくれてありがとね!」


「あらぁ、咲希、夏輝くん、いらっしゃい」


 料理をしていたのか、キッチンの方からから唯愛と私のママも顔を出した。


 今、私達が住んでいる家を建設中にもしばらく実家でお世話になっていて夏輝と私の家族も仲良しだし、たまに唯愛とジム帰りに寄ったりと、頻繁に実家には帰っているが、今日は陽愛ちゃんの誕生日パーティーというのもあって、いつもより賑やかで楽しい。


 最近疲れているのか体調が優れない日も多かったし、気分転換になっていいなぁ。


「あぅ、あー…… ぽぅ、ぽぅ!」


「ひ、陽愛たん!? よ、陽くん! 今、陽愛たんが『ポゥ』って言ったよ! ……もしかして陽愛たんは天才なんじゃないか!?」


「あ、あはは……」


「もう! パパったら大袈裟なんだから! んふふっ」


「パパは咲希と唯愛の時も同じような事を言って騒いでいたわよ? うふふっ」


 家族みんな幸せそう。

 もちろん私だって……


 ママと唯愛がテーブルに料理を運んでいたので私も手伝い、そしてみんなテーブルの周りを囲むように床に座り……


「じゃあそろそろヒメの誕生日パーティーを始めましょうか!」


「「「「「「ハッピーバースデー、ヒメちゃん」」」」」」


「あぅ! ……えぇへへへっ!」


 唯愛の合図で一斉にお祝いの言葉を言うと、陽愛ちゃんは一瞬目をまん丸にしたが、すぐにちょっとよだれで濡れているポゥさんのぬいぐるみを振りながら笑い出した。


 そして私達からは子供服を、パパとママからは知育玩具をプレゼント。


 まだ何をプレゼントされたのか陽愛ちゃんには理解出来ないだろうけど、気に入ってくれるといいなぁ。


 その後、みんなで食事をしながら、用意したケーキにろうそくを一本立てたり、パパと陽くんがどっちが先にビールを注ぐかでモタモタしている間にママが飲んじゃったり、陽愛ちゃんはプレゼントされた知育玩具に興味津々で、陽くんの膝の上でカチャカチャと遊んでいたりと、みんなで楽しい時間を過ごしていた。


「えへへっ、楽しいね、夏輝」


 こうしてみんなが笑っている幸せな日常を、愛する夏輝と平和に過ごせることが、私にとっては凄く幸せ……


 一応あれからも警戒はしながら生活しているけど、唯愛達や鬼島さん達、その他にも周りの協力もあって、怯える必要もなく生活出来るようになってきた。


 それにしても、唯愛と陽くん…… 幸せそうで良いなぁ……


「どうした、咲希」


 それに陽愛ちゃんが生まれてから更に幸せそうで羨ましい…… 


 私達もそろそろ考えても良い頃かなぁ……














 ◇◇◇◇◇



 大きな太い柱が何本もある、古代神殿のような建造物の中の一室。


 畳にこたつ、その上にはみかんによく似た果物が置かれ、壁に埋め込まれた七十インチくらいありそうな大きなモニターらしき物体に映る、幸せそうな家族の映像をこたつに入りながら三人で観ていた。


「やれやれ、もう大丈夫そうじゃな」


「そうですね…… 本当にありがとうございました『アルティ様』」


 一緒にこたつに入り、みかんによく似た果物を食べている絶世の美女、アルティ様に頭を下げてお礼を言う。

 顔は絶世の美女…… いや、顔立ちが幼く見えるから美少女かな? 神々しく輝く銀色の髪と金色の瞳、透き通るような白い肌…… あと顔くらいの大きさがある巨大スイカをお持ちの…… いわゆる『神様』と呼ばれるお方だ。


 ……ただ、身長はちんちくりんで子供と間違えられそうだけどね。


「おい、失礼なことを考えておるじゃろ! ……ふん、まぁいい、別に気にしなくても良いのじゃ…… があまりにも可哀想で、勝手なことをしたのは妾じゃからな、それに……」


「……ありがとう、アルティ様」


「この子が一番不憫じゃったからな……」


 アルティ様の向かい、俺の隣にちょこんと座る小さな女の子が同じようにアルティ様にお礼を言った。


 女の子の名前は…… ない。


「お礼を言われても妾がしたのは、過去のあの娘に、未来での悪夢のような記憶を植え付けただけじゃからなぁ、未来を変えたのは紛れもなくあやつらの力じゃよ…… クスリを盛られて動けなくなった時は少し手助けしてしまったがの」


 それでも救いの手を差し伸べてくれたアルティ様には感謝しかない。


「……本当に良かった」


 映像の中…… 幸せそうに笑う『咲希』を見て…… 安心した俺は……


「……っ!? あっ、身体が光ってるよ! どうしたの!?」


 慌てた様子で俺に触ろうとする女の子…… ただ、さっきまで触れられた俺の身体に、女の子は触れることが出来なかった。


「……見届けて満足したんじゃな」


「はい」


「……えっ?」


 どうしても未練があってこの場所に留まらせてもらっていたが…… その時ももう終わりみたいだ。


「これでもう未練はありません、ありがとうございました、アルティ様……」


「うむ、達者でな…… 安らかに休むがいい」


「……ヤダ! ヤダよ! 私も一緒に付いて行く!」


「ううん、君はこっちに来ちゃダメだよ」


「何で!? おいていかないでよ…… パパ!!」


 …………


「いや、ダメだ…… 君はのパパとママに可愛がってもらうんだよ…… 今度こそ、ねっ?」


「うぅっ…… イヤっ! 私はパパとずっと一緒にいるの!」


「大丈夫、あっちのパパがもーっと君を可愛がってくれるから……」


 あぁ…… 身体がどんどん光の粒子みたいになって消えていくのが分かる……


「……それじゃあ、元気でね」


「あぁーっ、パパぁぁー!!」



 さて…… それじゃあ俺はこっちで暗闇の中、一人で後悔しながら泣いているであろう、咲希を迎えに行くとするか。


 じゃあね…… ○○…… 君もあっちで幸せになるんだよ…… 


 こっちでずっと見守っているから……

 ママと一緒に……





 …………

 …………






「じゃあ、お前さんもそろそろ時間じゃな…… 今度こそ、ちゃんと産んでもらうんじゃぞ?」















 ◇



 ここ最近、体調が悪くて不安になった私は病院に行くことにした。


 夏輝にも付いて来てもらい、検査をしてもらった結果……



「おめでとうございます」



 これから先、まだ見ぬ未来へと私達は進んで行く……

 手を取り合い、明るい未来にするために協力して進んで行こうと二人で改めて誓い合った。


 ……二人で? いや、これからは三人で…… かな? えへへっ

 

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寝取られて、肉○○となっていた妻がタイムリープしてきた……らしい ぱぴっぷ @papipupepyou

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