黎明

ふぇおれ

プロローグ

 水に溺れたのかと思った。


 荒い呼吸を整えるようにゆっくりと吸っては吐いてを繰り返す。沈むにつれて胸が圧迫されるような感覚もリアルに残っていた。

 酸素不足の頭の中で考える。あのとてつもなく長い夢は何だったのかと。


 汗で張り付いた髪を耳にかけ、その手を見つめる。成人女性には少し幼い手の甲。お年頃のはずなのに、それはかさかさしたような肌触りだ。

 起き上がって部屋にある鏡の前に立ち、その人物を見つめた。寝起きなこともあって癖がついた髪先は、やっと胸に届くくらいの長さ。タレ目気味で、瞳は赤寄りの黒。

 腕や足には目立った肉がなく、お年頃にはそれが良くて目指すんだろうが、この体はそういうわけじゃないみたいだ。逆に腕や足に貼られた絆創膏、青紫のあざが目立つ。

 鏡から離れたり、近づいたり、その場で回ってみたりもした。

 少し前鏡を見た私は、泣いたような気がする。なんで私だけいつもこうなんだろうと。

 パズルのように、夢で見た一つ一つのピースが合わさっていく。



 あれは夢ではない、記憶だったのだ。

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黎明 ふぇおれ @fe-ore

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