第3話

変な赤い布をまとった女がダッシュで戸板へ近づいてきた。


戸板がよくよく観てみるとそれは服だということがわかった。


なんと言えばいいのか…と戸板が思考しているとついに赤い女は

目の前にやってきた。


そして叫ぶ。


「こ…黄龍様ですよね!!」


「違う。お前は誰だ?なぜ金魚の格好をしている?」


「は…はあ!?」と女の顔に若干のイラつきがはいる。


しかしなんて格好をしているのだこの女は?


高校生くらいだろうか?赤い布を複数まとったその姿は

まるで赤い金魚のようだ。痩せてはいるが。


「で、金魚が何の用だ?」


女の顔はイラつきを抑えてるようだったがすぐに作り笑顔をした。

ははは なんだか面白い女じゃないか。私はそんなにすぐに顔を変えられん。


「あなた様は黄龍様に間違いないんですよ。私の城にある古文書には

今日この日に現れるとはっきり書いてありましたし! 」


「ふむ?それでどうなる?」


「私は金魚じゃなくて朱雀といいます。

あのーそれでですねえ。とにかく!あの生意気な他の四神を

やっつけちゃって欲しいんですよ!」


戸板の全身に装備されてそうな偏屈スイッチがONになった。


「帰れ」


「え?」


ブンッ!………


その瞬間、朱雀は瞬間的に転移した。


自らが治める「南都朱雀」へ。


「うるさい金魚だった。いや金魚はしゃべらないか。さて」


戸板はまたスコップで穴を掘り出す。瞑想にちょうどいい穴の

深さはどれくらいだろう。などと考えている内にもう夕方。


クタクタだ。


穴掘りを一旦休み、穴からでる戸板。……


何か考えているのだろう。戸板の眉間にしわが入る。


「やはりか。『全能』の力と言ったが本気で思い、それを

口にださねば発動しないらしい……」


「疲れよ!とれろ!」


それを言葉に出した瞬間、戸板の体から疲れが取れていった。

これぐらいなら体力回復ぐらいならまあまたいいか。

と呟く戸板。


「さて…と」


スコップを持ち上げ穴掘りに戻ろうとしたとき、またそれに気づく。


金魚女だ。

しかも今度は飛んできている。赤い翼を広げ。


はて?さっきは翼など見当たらなかったぞ?どういうことだ?

なんてことを考えている内に朱雀は

先ほど走ってきた道を一瞬で飛び越えここへ着地した。

真っ赤な顔をして開口一番叫んだ。


「あ゛!あの!黄竜さまがやられたのでずが!!?わたっ

私あ一瞬で本当にぃ…ハアハア…南都の宮殿の自分のへやええーごフ!」

朱雀の鼻から鼻水がもれた。


どうやら飛ぶことは走ることより金魚女の体力を使うらしい。


「お願いーです!!話うお!!聞いで!!」


「わ!わかった!暑苦しい!」


「うわーーーん。わーーーん。」

しまった。泣かしてしまった。

そんなに罪深いことをしたのか。俺は!


「『ハンカチをあの金…朱雀のもとへ』!」


金魚の手のひらの中にハンカチが光を放ちながらあらわれた。


「あ゛…すみまぜん。……!!?」

朱雀の泣いて赤はらした眼に「はてな」がやどる。


「あのーこのハンカチは黄龍さまが?」


「ああ、俺がそこに出した。(黄竜じゃないけどな)」


「そうですか…もしかして、もっといろんなことできちゃいますか?」


「まあ…おそらく」


金魚女の眼に光がやどった。


邪…よこしまな光が。





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動かざること山のごとし。女神から「全能」の力をもらったし四神から求愛されたが馬鹿どもめ!俺はここから一歩も動かん! @shakenohatsukoi

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