プロローグ2 銀行強盗その①

そしてその一週間後。ぼくと、キューさんは警備員の変装をして、銀行に入っていた。顔は違うくても案外簡単に警備員として侵入することができた。

 カマさんが考えた作戦はこうだ。

①まず、僕たちが警備員として、突入する。

②そしてその次にカマさんが

「強盗だ!」

といって、銀行に入ってくる。

③警備員に変装しているキューさんとカマさんは、強盗役をしているカマさんをみて

「一応、金庫を確認してきます」

と言い、金庫の鍵を渡してもらう。そして奪う。


つまり童話の『泣いた赤鬼』のようにすると言うわけだ。

この作戦で大事なのは警報装置を押させないこと。もし押されてしまうと、警察がやってくる。

警報装置を押させないためには、

「まだ押さなくてもいいです」

などと警備員役の僕たちがどうにかしなければならない。

 J銀行のことは徹底的に調べ上げていた。小さな地方銀行で、警報装置のすぐ近くに部長が座っている。下見のときに部長のことを見たが、焦ると失敗しそうな、木から落ちる猿のような性格だと、ぼくは思った。

 警備員は、いつも日によって違う人がやっていて、僕たちが見知らぬ顔でも、もちろん怪しまれない。


「強盗だ!」

カマさんの声がした。これが僕たちの合図だ。

 銀行にいたお客さんたちが驚いてカマさんの方を見ている。カマさんは黒い目出し帽を身につけていて、手には銃を持っている。(本物の銃ではなく、エアガンだ)

 部長も客と同じように「はっ!」と焦っている。部長の手が警報装置に伸びる。それをみたぼくが部長の手を掴んだ。部長の耳元で、ぼくが囁く。

「安心してください。あの強盗が持っている銃は、偽物のおもちゃです。引き金を引くと大きな音がなりますが、偽物です。いちおう、金庫の方を確認してきます。鍵を渡してください」

わかった、と言って部長が鍵を、ぼくに渡す。

 それを聞いていたキューさんは

「じゃあ僕もついて行きます」

と言った。後ろでカマさんが、『手をあげろ!』などと話しているのが分かった。



金庫は意外とすぐに開いた。

「結構、すぐに開くもんなのね」

なんてキューさんが言っている。

 金庫はこぢんまりとしていて、すごく小さな部屋だった。しかしたくさんの札束が詰め込まれている。ここにあるのは、客が貯金をしている金だ。貯金をしている客には申し訳ないが、奪うしかないのである。

 ぼくはバッグを取り出し、金を詰め込んだ。二人でせっせと詰め込んでいく。

「入れれるだけ入れろ!」

キューさんが言う。

 バッグがパンパンになり、重たくてもてないようになった。ここからどうやって銀行から抜け出すかが肝心だ。

パンパンになったバッグを警備員が持っていたら、部長やほかの人に怪しまれるに違いない。だから方法は一つ!

ーーー正体を現すのだ。

 つまり、銀行強盗だということをバラす、というわけだ。

ぼくはバッグから銃を取り出した。そしてキューさんとこう叫ぶ。

「強盗だ! 手を挙げろ」

 

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