異世界の銀行、レベル100!

@kamemidori

プロローグ1 計画を立てる

『次のニュースです。東京都新宿区の銀行から、およそ四千万円ほどの金額が、強奪されました。警察は、今回の犯行を、今、世間を騒がせている強盗団、通称ブラックジャックの犯行だと見ている様です』

ぼく、倉田宗介は、テレビの電源を消した。自分たちのニュースばかりで飽き飽きしていた。

 今、ニュースでやっていた「ブラックジャック」はぼくたちのことだった。いままで、何回も銀行を襲ってきたが、一度も失敗したことはない。

ーーープルルルル。

電話が鳴った。ぼくは電話を取り上げた。

「なに? カマさん?」

カマさん、というのはぼくと同じ、ブラックジャックの一員だった。ちなみに、本名は知らない。ネットで集まったからだ。

『いやーまた計画を立てようと思ってね』

「また、銀行襲うんですか? 流石に警察の警戒、高まってますよ。今度こそ、失敗しますって」

『そこで失敗しないのがblack jackだ』

black jackのところを発音よく喋る。

『それでなぁ、今回は、今までとは比べ物にならない額だ。一億円盗むぞ』

「1億! やりすぎですって。だって今まで僕たちが狙ってきた額は、一千万以上、五千万以下という値段だったじないですか。しかもその値段がちょうどいい。しかも一億円だと三で割れませんから、盗めませんよ」

「ブラックジャック」は三人いた。その三人で平等に金を別れるようにするのが、ぼくたちのルールだった。

『だから今回は新ルールを追加しようと思ってね』

「新ルール?」

ぼくは聞き返した。

『ああ新ルールだ。その銀行強盗で一番頑張ったものがその余った分をもらう、という感じだ。どうだ、それだと皆その余りをもらいたくて仕事がはかどるだろう』

「そんなに簡単にお金が入ってきたら、もうとっくに銀行強盗なんてやめてるよ。結局、カマさんが全部あまりのぶんを持ってくんでしょ。それが喧嘩が起こらない一番の解決法だ、なんて言って」

『ま、ということで、今日カフェで計画を立てるからこい』




次の日ぼくはいつものカフェに来ていた。名前は『エルキュール』だ。

 ぼくはドアを開けると、カフェの中にズカズカと入った。この古風な雰囲気がぼくは好きだった。

 カフェの中に、二人だけ、客がいた。どちらも見知った顔だった。

 カマさんと、キューさんだ。

 キューさんは、自称女。オカマである。ブラックジャックの三人目のメンバーだ。

「やぁキューさん、久しぶりだね」

ぼくは、キューさんを好んでいた。優しくて、賢い。まぁブラックジャックのリーダーのようなものだ。

「で、今回はどこの銀行を狙うの?」

カマさんが質問に答える。

「ここだ」

カマさんはポケットの中にあった、シワシワになった地図を取り出した。そして、地図の『横浜銀行』と書かれたところを、赤いペンで大きく囲んだ。

「横浜銀行を狙うのね。でもさすがに危なすぎじゃないかしら。私たちが強盗した後で、警戒が強まっている頃だと思うし……」

「そこを行くのが、black jackだ」

さっきの電話で話した内容と同じ会話になってきている………。

 ぼくは、カマさんにこう聞いた。

「じゃあ、それだけ自信があるってことは、なにか秘策があるってことだよね」

よくぞ聞いてくれた、というような顔でカマさんがうなずいた。

耳をかせ、とカマさんがキューさんに言う。

 そしてカマさんがキューさんに「ゴソゴソ」と何かを言った。それを聞いたキューさんは、すこし考えるような顔をしてから、ニヤリと笑みを浮かべた。

「よし、やるぞ」

本格的に、横浜銀行を襲うことが決まってきたようだ。

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