鬼のいぬまに/しまうま
◆作品URL
https://kakuyomu.jp/works/1177354054888578336
◆レビュー
「俺の中の鬼は、全てを喰らい尽くした。両親も、仲間も……俺の魂すらも」
最凶の鬼を宿した主人公が、自分の周りに起きる悲劇を終わらせるために旅をする物語です。
序盤から悲劇的グロ展開は人を選ぶものの、刺さる人には刺さる話かなと思います。
最初の鬼との戦闘、そして主人公に訪れれる危機的状況の見せ方など、物語への引きは理想的かなと感じました。
一方で、何か物足りなさを感じていたのですが、鬼灯城のエピソードまで読んで思ったのが、主人公の存在感が薄い点でした。
それは序盤の展開での喪失感の少なさにあるのかなと思います。
ヒロインは登場時に両親を殺されてますし、白飾様は家族同然に思っている領民への思いを汲んでもらえずに、その生を終わらせられてしまう。
それに比べると主人公にかかわる死のエピソードが数こそ多いのかもしれませんが、軽いように見えてしまうように感じました。
序盤で語られてはいませんが、おそらく最初の犠牲者は主人公の両親とか、生まれ育った村の人たち、幼馴染などになるのだと思いますが、主人公にとっての原点は彼らの死のトラウマにあるのかなと考えられます。
序盤のエピソードの死については、旅人の時点で自分の生の終わりを決めたきっかけのエピソードがそれにあたるのかなと。
ただ、本人は鬼になっている間の記憶がないという点を考えると、その悲劇の原因が自分にあると、いつ知ったのかもポイントになるかなと思います。
例えば、意識を取り戻したら、周りの人が死んでいたとして、何回か繰り返されれば気づくのかもしれませんが、最初の1回目で、彼らが死んでいる原因が自分だと思うかどうか……おそらくは別の誰かがやってきて、殺したのだと思うのかなと。
そう考えると、最初は自分以外の鬼が自分たちの近しい人を殺した恨みから、復讐のために旅を始めた、しかし、途中で、その鬼が自分だと知ったことで、目的が変わった。
その前後でトラウマとして残っている記憶が鬼がやってきて殺戮した、から、自分が鬼になって殺戮したに変わる。
その原点のトラウマを自分の周りに悲劇が起こるたびに夢に見る、というようなエピソードを序盤の悲劇の後に入れると主人公の存在感が大きくなるのかな、などと感じました。
確かに、主人公の周りの人が死にまくるというのは悲劇的ではあるのですが、自分が死ぬことで終わらせるというところとのつながりが弱いように感じました。
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