5話 メイド服お披露目会 前編

 時がやって来た。僕が待ち侘びたこの時が。


「はーい、みんなこっちで採寸ね」


 クロムノーツがカフィアたちを連れて、僕のいない部屋でメイド服の採寸を行う手筈を整えていた。


 いやぁ、長かった。


 最初は簡単にメイドをゲット出来ると思ってたのに、いつの間にかクロムノーツの贖罪に協力させられていたり。僕は結構働いた。


 でも、その苦労も今日で終わる。


 後少しすれば、僕の元には可愛いメイドたちが来てくれるのだ。それほど嬉しいことはない。


「楽しみだなぁ……」


 僕は相変わらず無造作に並べられている、椅子のうちの一つに深々と座った。少し脚が高い設計らしく、僕の両足はぶらぶらと宙を舞っていた。


 メイド服のスカートの隙間から、何処からか吹いてきた風が入り込み、股がスースーしている。スカートは抑えよう。


 まぁ、今の僕は上機嫌なのでこれしきの事では怒り狂ったりはしない。何なら鼻歌だって歌っちゃうもんね。


「まだかなぁー」


 僕は体を横に揺らした。


 そう言えば、僕の声は相変わらず女の子そのものになってしまっている。戻ったのはカフィアを助けた時の一回だけ。


 本当に、クロムノーツは何がしたいのか。僕は結構しっかり目に訳がわからなかった。


 閑話休題。


 そんな事を考えているうちに時は過ぎていき、とうとうメイド服お披露目会が開かれる時がやって来た。

 

「はーい冥ちゃん、お待たせ!」


 クロムノーツは何だかいつもよりも上機嫌そうに僕へ近づく。


「やっと、やっと完成したのか!?」


「完成したよー!ま、まぁ、今から見せるからそう焦らずに」


 僕は嬉しさと待ちきれなさから、クロムノーツの肩を力強く掴み、問い詰めた。そんな彼女の頬はリンゴのように赤かった。


 彼女は僕を落ち着かせ、奥で控えているカフィアたちに一人ずつ指示を出した。別に一気に紹介しても良いのに。ま、そっちの方がより堪能できるか。


「まーずは、カフィア!!」


「はい」


 クロムノーツに呼ばれ、カフィアが姿を現した。


「き、綺麗だ」


 僕が声を漏らすのは当然だったと思う。


 カフィアの綺麗な白髪と整った顔立ち、すらっとした体のラインがメイド服を引き立たせている。加えて、ヴィクトリアンメイド服を採用した事で、より大人らしく魅力的に見える。


 一応メイド服は全員同じモデルをベースに使っているらしいが、カフィアの場合は一番ベーシックなもので抑えられている。


 僕は彼女の美しさに身惚れた。まじ最高。


「本当に綺麗だよ、カフィア」


 僕がそう言うと、彼女は少し不満そうに口を膨らませた。


「可愛くは、ないのですか?」


「可愛いに決まっとるやろがっ!!」


 彼女の問いに僕は即答した。


「ありがとうございます、冥様!」


 うん、やっぱ可愛いわ。


 カフィアは満足したのか、僕の隣にやって来て、同じように椅子に腰掛けた。


「じゃあ、次!リミルア!!」


 頃合いを見て、クロムノーツがリミルアを呼ぶ。すると彼女は恐る恐るといった感じでゆっくりと姿を現した。


「は、はい……」


「これまた、可愛い」


 リミルアは少し童顔な黒髪のロングヘアー。それも相まって、綺麗というよりは可愛いに近い子である。胸はないが、ヴィクトリアンメイド服には装備品カスタマイズされているので、ベルトで少し胸が押されて強調されている。


 窮屈そうではあるが、装備品はあって困るものでもないので我慢してもらおう。可愛いし。


「そうですか…嬉しいです」


 リミルアは口元を押さえてふふっと笑う。やっぱりこの子、素ぶりというかなんというか、総合的に破壊力凄いんだよな。


 彼女はカフィアに続いて僕の隣へと移動する。両手に花って言うのかな、この状況。


「つーぎは、シフェード!」


「はーい!」


 次にやって来たのはシフェード。


「おお、凄い……」


 僕が感嘆の声を上げた理由はただ一つ。それはマジでシンプルという点だ。


 彼女のメイド服は前の二人とは少し趣向が異なっている。


 彼女は世界最強の策士。けれど完全に裏方という訳ではなく、自ら敵陣に赴き、潜伏などを行い内部からの破壊を行う。


 そういう彼女の行動に合わされた完璧なデザイン。無駄な装飾が排除され、身軽さに特化されたデザインになっている。潜伏もしやすい。


「どう?……冥ちゃん」


「最高です有難う御座います」


 僕は相変わらず即答した。


「そう?まあ、なんかそう言うと思ってた。冥ちゃんだし。でも、嬉しい」


 彼女も上機嫌で僕の元に来る。


 可愛いので頭ポンポンしちゃう。


 あ、照れた。


「はいはい、そこまでにして冥ちゃん。次行かないと本当に二日とか使いそう」


 痺れを切らしたクロムノーツが催促する。


 何も間違っていないのでぐうの音も出ない。


「そうだね。呼んでくれる?」


「はーい」

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僕がメイド長。〜異世界最強を口説き集めた女装メイド、史上最強のメイド軍団を結成する〜 大石或和 @yakiri_dayo

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