第13話 白色 その2

付き合い始めて5日目。

それまで友達の期間が長かった。

始まりは彼女からで。

「ねえ、どこ中?」

隣の席になったのが、そもそものキッカケだった。


「でね、今度部活でレギュラーに決まりそうなんだ」


彼女が嬉しそうに隣でそう報告してくれた。


「へえ、良かったじゃん。毎日居残り練してたおかげだな」


そう言うと、


「毎日待っててくれてありがとうね」


と笑ってお礼を言ってくれた。


「そんな、別に……俺もどうせ部活してたから」


改めて言われると照れくさくて、顔を逸らした。

二人とも運動部には所属していたが、彼女は県内でも強豪と言われる女子バスケ部に籍を置いていたから、なおさら部活内容は厳しかった。

俺は、そこそこ記録会や大会に出たりすればいい、お気楽な陸上部で。


「あれーー?照れてるの?かっわいいーー♪」


そう彼女にからかわれた。友達の時も、結構主導権を握っていたのは彼女の方。


「照れてねえし。それに、男に向かってかわいいって言うのはなあ……」


そう言って彼女の方を振り返ったら、顔が近くにありすぎて逆に俺がドキマギした。


「あ……わりい……」


急いで顔を離した。

少し不自然すぎたか?と自分の行動を反省するも、まともに彼女の顔が見れないから、何も出来ない。

暫くの間沈黙が続いた。

なんだか申し訳なくて、俺からは何も言いだせなかった。

すると、


「かわいいって言って、ごめんね」


そう彼女が聞こえるか聞こえないかくらいの声で呟いた。


「や……別に……」


そこまで怒ってないと言おうと思って、顔を向けると、丁度彼女も顔を向けていて、目が合った。その時の彼女の顔は真っ赤だった。


「かわいい」


俺は思わず、そう口にしていた。

それを聞いた彼女が、


「そ……そんな!だって、髪の毛短いし、サラサラロングの子みたいに綺麗じゃないし」


と言い始めたので、


「俺はそんなの好みだとか一回も言ったことないぞ?」


と誤解を解いておいた。


「え?だって、男子って清楚系が好きなんでしょ?あと隠れ巨乳とか」


どこでそういうこと話しているんだろう?

俺は思わず頭を抱えてその場にうずくまりたい気分になった。

女子の雑誌の中身なんて見たこともないから分からないけれど、もしもそこに書かれていたとしたら、抗議をしたい気分になった。


「ちげえよ。少なくとも俺はちげえよ」


少し怒って、声が低くなった。

そうなんだ……良かった、と小さく聞こえた。

そんなこと気にしてたのかよ?と俺は分からないように溜息を一つついた。

なんでこんなにカワイインダヨ!と誰かに話したくなった。

そう思っていたら、


「あ、雪!」


と隣で彼女が大きな声を出した。

え?と思って上を見上げたら、上から小さいものがふわりふわりと降りてきていた。


「ほら、雪!」


そう言って、彼女は俺に手袋についた雪を見せた。


「本当だな。どうりで寒いはずだわ」


そう言って、俺は息を吐いて白くなったことを確認した。


「本当に、寒いね」


そう彼女が言ったので、俺は意を決して、


「じゃあさ、手つながねえ?」


と自分の手を彼女の目の前に出した。

まともに彼女の顔が見れずに、心臓の音だけがバクバクと鳴っているのを聞いていた。

そっと自分ではない、手の暖かさを感じた。


「うん。つなぐ」


そう彼女は言った。

俺はそんな彼女の手をぎゅっと壊さないように、優しく強く握った。

彼女の顔を見ると、さっきと同じように真っ赤なままだったが、


「あったかいね」


と笑った。


「おう」


照れくさくて俺はそれ以上何も言えずに、帰り道がもう少しだけ長くなればいいのにな、なんて思いながら歩いていた。



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色物語 @Sui_00

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