エピローグ〜それぞれの明日へ〜
三波は卒業後、いったん金融関係に就職するが、有形無形の身分差別による汚れ役ばかりの職務とパワハラへの苛立ちと、燻り続けるエンジンへの情熱が抑えきれず五年で脱サラし自転車屋の「三波サイクル」を始めることになる。
並木は、自動車部品販売店「並木モータース」を順調に経営しているが、取り扱い商品は基本的にステッカーや電飾、室内系のドレスアップなどで、走り装置へは手出ししないことにしている。
走り装置への手出しをするととどまるところを知らない底なし沼であることとそっち方面にはどこまでも追求の手を緩めない
生活のために経営する店は自動車の限界を追求するのではなく安全で楽しいカーライフを一人でも多くの人に提供することで末永くご愛顧いただける、多くのお客様にとってなくてはならない店になることが重要だ。
学生時代の友人は他の機会に得ることのできない、仕事の利害関係のない生涯に渡る純粋な友人である。 瀬名とは利害がある関係ではあるが向こうも他のメカニックと組んでみたがどうもフィーリングが合わないと結局並木と三波しか居ないとご指名を受けている。
金融機関に就職した三波、公務員になった坂本たちとは時々一緒に呑む仲間であるとともに、毎シーズン何かのモータースポーツに参戦する瀬名のメカニックとして三人で毎年毎年他人様に言えないようなトンデモパーツを密造している。
吸着排出タイヤ、からくりホイールライト、空飛ぶハイドロマチックサス。あと排熱ゼロの三波サイクルエンジン搭載車で暖房を効かすための超高回転型小型ヒートポンプなどなど。
並木の店の資金繰りがピンチのときアサクラという男に並木のマイカーであるピンクの軽を売ったらさっそく事故りやがったので事故っても中の人が潰れなくするシャーシを作る。
一命はとりとめたが、何故かこのピンクの軽を恐れているので再度引き取ることにした。なにかトラウマになってるようだった。普通の軽なのに「アクセル触れた途端ぶっ飛んだ〜」と自分の運転に瑕疵はなかったと主張してる(※卒業旅行中にガソリン代ケチッた三波がセルモーター内にこっそり三波サイクルエンジン仕込んでいた車体である)
不思議なもので引き取ったピンク軽の次の購入希望者もアサクラ氏だったが、この人は事故りこそしなかったものの、アクセルベタ部みの加速に肉体が耐えられず全身複雑骨折し、クルマを手放すことにした。まるで悪魔のクルマだ。同じ名前の男に売れそして返ってくる。次に購買希望者が同じ名前だったら前の2人は死んだってことにしてちょっと脅しをかけて所有する覚悟があるのかふるいにかけよう。(以下「ライトニングライダー2025」に続く。)
坂本が公務員として落ち着きはじめた頃、三波が脱サラして自転車屋を始めたとの話を聞く。またなんで自転車なのかと聞いたら、貯めたお給料で開業出来る輸送機器取扱店の業態が街の自転車屋さんだけだったとのことだ。いずれ原付き、バイク、ミニカーと取り扱い品目を増やしていっていずれは自動車チューンショップにしていきたいとのことだった。
三波は生活のために一度は足を洗うことを決めた自動車への夢が捨てられなかったようだ。男の子のこころにはいつでも何処かに大好きな乗り物が走っている。普段は鳴りを潜めているが、フッと力が抜けるとその情熱は勢いよく燃え上がるものなのだ。一方並木はクルマへの情熱はさほどでもないが、心の中に住み着いた怪獣が、なんとなくモータースポーツへと誘い、それに抗って安全安心で楽しいカーライフを一人でも多くの皆さんに提案するという建前で自働車部品販売店を経営してるが。本当はサーキットに怪獣を走らせたいのである。
「俺たちの最速神話をまた始めよう!まず当面の目標は瀬名をF1、WRCのどちらかまたは両方に送り出す事だ!」
当面の目標でそれですか……?最終目標や生涯に渡る栄誉ですよ。
「しかしブランク五年を取り返すのは容易ではない。三波サイクルエンジンの動作や組み上げのコツはまだ手が覚えているが、そのまま組むと車体がとてもバランスの悪いものになる傾向があったことをおぼろげながら覚えてる。………なんだっけ?」
「あぁ。パワー過剰だったよ。こんな小さくして大丈夫かよと思うくらいでちょうどいい。」
そして、スポーツカーなら2.6リッターは無いと様にならないという思いをグッと抑えつけて断腸の思いで1リッターで我慢した復帰後第一号機を組み上げたが、ライトニング号に乗せたら10億馬力になりさらに小さくすることになるのはまた別のお話。
ドライバーの瀬名は、もともと学院の生徒ではなく、三波たちが在学中から始めていた走り屋が集まる喫茶店で、ホムンクルス招き猫と信楽焼の狸ベースのホムンクルス「どえらいもん」を従え日々営業している。
レースシーズンは店を不在にするが二体のホムンクルスに店を任せてレースに専念してる。彼にとっては交通事故を並木たちに救われた時以来転生無双チートスローライフを満喫してるが、いざレースとなればスローライフどこ吹く風のキレッキレの闘争心丸出しの「光速の貴公子」で敗北知らずである。近いうちにF1かWRCのシートを手に入れるだろう。
〜完〜
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