第50話 回避された武力衝突
どこからともなく降って湧いたようなモノリス――自分自身をも製造できる汎用工作機械――があちこちの商店に設置されている。はじめの出どころは不明だが、ヒール売ってるキャバレーや瀬名の店にそれがあるというのは有名だ。
この装置がどこの誰が作り出し、それらの店に置かれているのかは誰も知らない知られちゃいけない。設置されているところでは何故か魔術学院Eクラスに対するシンパシーが感じられるキャンペーンが張られているが、それは店の判断により独自に行なっていることであり製造販売元は一切関与してないし、そもそもどこが製造販売元であるかも知らないことになっている。
瀬名の店では「学生さん応援」と称して魔術学院Eクラスの学生証提示で特別安価で設計データ利用・出力出来るサービスをやっている。Eクラス以外だと割引無しで出力する製品の一般的な価格を使用料として請求するのでだいたいいつでも空いてる。
三人は瀬名の店でブラジルコーヒーをすすってる。
「これで良かった……んだよね?」
「いいんだよ、もう上位クラスからお下がりもらわなくても良いんだよ。これからはおれたちEクラスが上位クラスにお下がりをくれてやる。そん時は言いな、理事長サンよぉw」
「節約したければEクラスの学生に頼むだろうしキックバック欲しければ普通の商社なりを使うでしょう。出発点に対しての満額回答はこれしかありえません。」
「設備お下がりがなくなることでEクラスの地位低下が懸念されるから、後輩たちのために立ち上がった。これが俺達の闘争の原点。」
「そうね。」
「この店でEクラス特権を提供する限り、Eクラスの学生証が特別な意味を持つ。その特権を維持するためにも学生はこの汎用工作機械自身を出力するバイトだけは首を縦に振らないだろう。つまり学院に持ち込まれる心配は無い。Eクラスの地位向上と、設備調達予算不足の両方を完全にクリアした。作戦は大成功である。」
「でもEクラス、バカばっかだからなぁ」
「おまゆ〜!俺もかw」
バカと天才は紙一重である。共通してることは空気読まないということだけだが、それはバカよりも天才のほうが社会に与えるインパクトは大きい。
歓談していると信楽焼の狸「どえらいもん」がケーキを運んでくる。いや、これは修理上がりだから「帰ってきたどえらいもん」か。
「おまたせしました。パンケーキ、ラズベリーパイ、ラテパンの三点お持ちしました。」
こいつが運んでくるとお菓子の名前が意味深に聴こえるが気のせいだ。注文取りの時は瀬名本人に口頭で頼んだので気が付かなかったが、もしや猫と狸がメニューまで開発してたりするのか?
焼き立てのパンケーキは香り高くとても美味く、瀬名の強いこだわりを注ぎ込んだブラジルコーヒーともよく合う。
「なんかスッキリしないけど、これにて一件落着なのよね?」
「落ち着いて考えて、これ以上完璧な解決は無いはずですヨ。」
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