第45話 帰ってきたどえらいもん
瀬名の店から帰ってきたどえらいもんをみて坂本の第一声は
「なんか部品増えてない?」
だった。
「ずいぶん可愛がられてたようだな。ケツのジョイスティックは謎ですヨ。なんでこんなもんをつけようとしたのか理解に苦しむ。」
「100歩譲ってつけ髭までは理解するとしても、どうしてジョイスティックをここに付けるんでしょうね?つけるなら前じゃない?」
こらこら坂本、女の子がそんな下品な話をしてはいけません。
「φ華キャノンならジョイスティックじゃなくてノズルだよね?」
並木、最近もみもみ魔法を発動出来る機会が少なくて溜め込んでませんか?
「ともかく、猫としての自我を持ったどえらいもんは一度死んだ。これからオペを行う!」
三波が工具を握りしめ、これからお楽しみタイムといったニヤけた表情をしてるけど、部品増えてはいるけど減ってないしそもそもハードウェアは壊れてない。
「とりあえず、メモリカード外して。」
ハードウェアはこわれてないが随所に仕込まれたメモリカードが刺さったマイコンボードは外から外されないように工具がないと外せない場所に配置されている。
蓋を工具で外してメモリカードを回収してチェックする。
「書き換え可能回数超過だね。」
並木がメモリカードの診断ソフトを立ち上げ結果を確認する。
こんなこともあろうかと、同じデータを2つのメモリカードに記録するように多重化してあるので生きてるブロック単位に取り出して終了時点の学習データをサルベージする。
「磁気ディスク装置と違って突然来るんですヨ」
「でも、磁気ディスク装置はどえらいもんが動く衝撃に耐えられないよ。」
「気絶時の学習データは諦めて、定期的にスナップショット取るようにして主記憶で勝負するようにしねぇとな?」
並木はプログラムの制御部分をメモリカードの入出力回数を減らすように書きなおす。
その間坂本と三波は破損したデータをぼーっと眺めてる。最後の記憶に「おい、そこのたぬき」という言葉の音声データがひたすら延々と格納されている。よほどトラウマだったようだ。可哀想に。
「やっぱり、招き猫の学習データの流用は凶と出たみたいだな。」
「だいたいどのリストのどのアトムが自我に関係するかの法則性が掴めたから、たぬきの自我に書き換えよう。」
変な場所についてたジョイスティックやつけ髭は外し、執拗に塗られた塗装は洗い流して、まっさらな信楽焼の狸のようになる。
こいつに修正済みプログラムとデータが焼かれた新しいメモリーカードを刺して蓋を閉じて起動する。
デバイスはほとんどいじってないので、起動時自己診断はすぐに終わり、起動した。
「ぼく、どえらいもんです。」
なんか違うようだが、大丈夫だ。瀬名の店に返そう。
―――
どえらいもんを瀬名の店に届けた日、また深圳の友人とやらが来て、どえらいモンは店の前で停止していたそうだ。勝手に改造したのバレると面倒だから自発的に停止してたとのこと。随分と賢くなったもんだ。
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