第29話 リカバーエキス
安心して抽出出来るとわかったエクスリカバー原液を並木に抜いてもらってフレームとホイール、そしてエンジンを作るのに充分な聖剣素材が出来た。エクスリカバー原液は強力ポーションとしての効果があるものの取り扱いを誤ると反物質を放出する恐れがある超
危険物なので間違えないように反物質であることをわかるように名前の前後を反転させて「リカバーエキス」とラベルを貼る。前後入れ替えても却ってどこにでもあるもの感になってる気がするが、気のせいだ。それにEクラスのゼミ室といえどここは学術機関の研究室。うかつにドッカンさせるバカは街の中よりは少ないだろう。
……コンコン……
ドアがノックされる。誰だろうこんな時間に?
「はい、どちら様ですか?」
「怪しい者です。」
ダメじゃん。ゼミ室危険な物質を保管するのに全然安全じゃない。
「怪しい者なら帰ってください。ここは取り扱いを知らないと危険なものもありますので有識者以外の立ち入りを禁止してます。面会は日を改めて食堂でお願いします。」教官が返答した。
「あっ、いい間違いました。怪しいものではありません。」
三波が思わず突っ込む。
「自分から怪しいですという怪しい奴は居ないだろ。」
いや、さっき言ってたな……いやそれはいいや。
「はい、明日昼に学生会館の第二食堂でお願いします。三波さん、並木さんもお願いします。」
「坂本はいいのか?」
「はて、どちらの坂本さんですか?わたしが用事があるのは三波さんです。」
三波、並木、教官がここを決まった時間に不在にするというと防犯面で非常に心配である。坂本に留守番させるなんて言うのは猫に鰹節であって、まだ完全不在にしたほうが安全だ。瀬名はそもそもここの学生ではないのでいつもいるわけではない。
三波と並木は目を合わせ。リカバーエキスは
肌身はなさず持ち歩こうということで合意した。
―――
魔術学院の学生会館は購買部2つ、学生自治会2つ、食堂2つが入ってる。学生自治会が2つあるのは学校間の学生自治会を連絡する組織が大手三団体あるのだが、そのうち二団体に対してここ魔術学院をオルグ完了まであと少しという報告をして連合会から活動資金援助を引き出すための小細工である。これが実にうまく機能している。その関係で購買部も食堂もそれぞれ支配下ということにして、有事の際にはどっちがどっちを使うという取り決めだけしている。表向きは敵対してるが報告の上ではそれぞれが弱小組織があと一つ残っててあともう一押しで全校制覇だという話にしてそれぞれが加盟する連合会から援助を引き出している。そんな背景のもと自治会と関係のない生徒は気にせず両方好きな方を利用できる。いつかバレてそれぞれの本部から殴り込まれなければいいのだが。
昨日の夜間に突然現れた訪問者と食堂で会う約束がある。
第二食堂には先客が居た。この人が昨日の訪問者かどうかはわからないがとりあえずこのまま教官、坂本、並木、三波で席につく。
先客は一人でゆっくり食事してたところに大所帯が押し寄せてきて不快だという態度をあらわにして会計済ませて出ていった。この人じゃなかったらしい。それにしてもいちいち感じ悪いやっちゃな。そんな態度示さず居たいならいればいいし、立ち去るなら気持ちよく立ち去れ。いちいち不快感ばら撒く必要ないだろ。
とりあえずゼミ一行でランチするが、とうとう会う予定の人は第二食堂には現れず、それぞれ午後の授業へと向かっていった。
その頃、学院正門のすぐ前で目出し帽にヘルメット、マスク、レインコートに鉄パイプを持った怪しいエルフが職務質問を受けていた。
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