第17話 一本でも放射線。今すぐやめろ
何本か爆破していくうちにだんだん爆発が大きくなっていく。並木の集中力が切れて魔術制御が雑になってきているようだ。
「おい、少し休もうか。」
三波が提案する。物理的に繋がってる聖剣の茎と根を破壊するギリギリの質量消失を聖剣内部に起こしてその爆発の威力で聖剣の草を倒しているのだが、質量消失量が増えると威力過多になり枝を折るだけで終わらず爆発で外にエネルギーを放出する。
「いや、あともう少しやっておかないと今日中に終わらないよ。」
「オメェのその魔力が聖剣の茎ん中で起こしてる事わかってないだろ。溢れて外に出るエネルギーがどの形態とってると思ってるんだヨ?」
「えっ?熱じゃないの?」
「まあ最終的には熱になるんだが、初っ端は放射線みたいなもんだ。溢れた分で被爆するぞ。一本でも放射線だ。今すぐやめろ。」
「ご、ごめん……。」
「まあ、気をつけてくれればいい。まだヒールあるんだろ?」
「また買える。あの店が潰れない限り。」
「フラグ立てるなw」
「フ、フラグって?」
「でもお前さんなら買えなくなったら自分でヒールくらい作っちゃいそうだヨな」
そして小休止を挟むことにした。
「お前さんはここでぼ~っとして魔力回復に専念しろ。作業のキーとなるこの工程を出来るのはお前さんだけなんだからな。倒した聖剣は俺たちが集めて回ってくる。」
三波と坂本は、爆破して倒れている聖剣を一箇所に積み上げる。小一時間ほど二人が集めて回って背丈分くらいぎっしりと積み上がる。
「まだ一人ギリギリ歩けるくらいしか刈ってないのにこんなに生えてたんだね。もうひとセット刈ったら持ち帰れないよね」
「それがコイツ意外に軽いんヨ。決して折れず曲がらずよく斬れて軽くて斬撃が当たると爆発するって武器としてはすごいな。さすが聖剣。」
「きっと希少品ならオレたちもお目々が¥マークだったんだろうけど、もう疲れたよパトラッシュ。刈っても刈っても聖剣が尽きることなく繁茂してて刈るのも細心の注意が要るなんて。」
そう。この作業は精度が生命であり、最小の破壊にとどめておかないと聖剣が飛び散ったり放射線が出て危ないのだ。魔力の大半は魔力を強めすぎないことに使われている。
はじめはおめめが¥マークになってた坂本も流石に見慣れて飽きてきて、もはや聖剣が駆除困難なしぶとい雑草にしか見えなくなっている。
「この刈り取った聖剣もやり場に困るわね。どうするのよ?」
「反物質を化合状態で保持しつつも安定してるんだよな。この軽さとこのしなやかさと折れない性質。これを加工できたらすげぇ素材になる。」
「まずは持ち帰って解析だね。でも拡大鏡の電子線と反物質中の陽電子がぶつかって消滅しちゃわないかな」
「それ含めて、この草原で育ってるんだからある程度大丈夫な構造になってるはずだけどヨ、消失や試料破壊が起こらないということと拡大鏡が正しい像を結ぶのかというのは別の問題ですヨ。」
「やはりここはアクティブな電子拡大鏡じゃなくてパッシブな光学顕微鏡で見るしかないな」
パッシブと言っても光源当てて見ている以上はあんまし変わらないような気もする。育った環境でも浴びているものであるという以上のものではない。
観察はまずは考えられる方法を試してみるとしてもこの刀身丸だしの聖剣の山をどう持ち帰るのかという課題もある。葉が恐ろしく鋭利で、軽いのに置くだけで自重でスパスパと通り抜けてしまう。
三波の提案に従い、丸太に葉を刺して茎の部分を縛って固定する。丸太に刺すのもサクっと刺さり、そのまま葉の向きに力をかけたら丸太を抉りそうだ。だから茎を縛り付けて余計な方向に力が掛からないようにする。
安全な運搬方法を見つけたので、山の守りをしてる爺さんにまた来ますと伝えて山を降りた。
―――
持ち帰った聖剣は並木、三波、坂本で山分けしたが並木も坂本もやり場に困ったのでやや多めに三波が引き受けることになった。
三波としては一応使うアテはあった。三波サイクルエンジンのパワーに耐える車体及びホイールを形成する素材としての可能性を追求する。しかし未知の素材なので、どうやって加工できるのか見当もつかないので、加工技術の発明から始めなくてはならない。
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