第6話 (残虐描写あり)トラックのトラップ

 次の店に行こうとふたりで歩道を歩いていると、目の前をサッカーボールが通り過ぎて車道に飛んでいく。既視感に並木はピタッと立ち止まった。この直後に子供がボールを追っかけてくるヤツ。教習所でボールが飛び出してきたらすぐブレーキと条件反射になるまで練習した。果たしてその未来予測通り子供がボールを追いかけて車道に向かって走ってる。三波はホイっと子供をつまみ上げる。


「オイ、クソガキ。公道でボール遊びしてるんじゃねぇ。通行の邪魔になるし交通事故の遠因になる」


「なにすんだよ!放せよ!」


公道ストリートはお前の遊び場じゃねえ。公園なりなんなり遊ぶための場所で遊べ。」 


キキーッ!ドッカーン!


 衝突音のした方向に振り向くと道路にはトラックにはねられ内臓とメガネが飛散し、破れた衣服がまとわりついてる血まみれの肉塊があった。エルフの運転手はあわあわと震えてる。こりゃ即死やね。


「いわんこちゃない。クソガキ!この事故の原因の1割くらいはテメーにあるんだぞ。」


「しらないよ言いがかりつけるなよ!」


「テメェみたいな、死人に口なしとばかりに責任逃れする奴ばかりがのさばると国が滅びる。」


 三波は何か思うところがあるんだろう。並木としては、もう子供は安全だから解放してもいいんじゃないかと思った矢先に険悪なムードになっている。


「まぁまぁ、こうしてこの子は轢かれなかったんだし……。」


「一人の取りこぼしもなく安全安心な社会の実現が錬金術師の誓いだろが!そこの見るからに底辺ヒキニートみたいな奴なら死んだって構わないのかよ?」


 破れた衣服がまとわりついてる内蔵をぶちまけ血がどくどく道路を穢している肉塊を指差し三波はさらに怒りを燃焼させる。まるで核連鎖反応のように爆発したら手がつけられない男だ。


 いや、これ救急車呼ぶまでもなく助からんて……。それでいて誰も通報しようともしない。見て見ぬふりだ。これはひどい。

 エルフの運転手が意を決したように電話を取るが、聞き耳立ててると保険屋と相談してる。事故ったらまずは救助と二次災害の防止措置だろ!何やってんだオメェ!


〜〜 被害者遺族side 〜〜


 うちの子がトラックに跳ねられたと聞いたとき、実は内心ホッとしていました。働きもせず恥ずかしいことを大声で叫び、抗えば暴れて怪我させられるし、腫れ物を触るような日々も将来の心配からもやっと解放されたのだと。いっそ殺してしまおうと思った事も何度でもありました。そんなことをしたら殺人者の汚名を着せられてしまう。

 昔は親としての責任として手のつけられない迷惑な子供を始末するのは親権の一部として認められていたのにどうしようと思っていたところの吉報。でも世間体というのがあるから悲しんでいる顔を見せなくちゃいけません。


〜〜 被害者side 〜〜


 瀬名孔人せな あなひと(享年44)つまらねえ人生だった。進学も就職も失敗。ブラック企業で血を吐くまで嫌がらせのトラウマで鬱になっちまった。地域ボスが経営するブラック企業だから労基も警察も職安もみんな会社の味方で誰も頼りにできない。

内情は犯罪企業だが政治家のバックで政府さえその腐り果てた会社と一味を支援。怒りとかそういうのより、やっと解放されて無に帰せるという安心感のほうが大きかった。

やり残したゲームの続きが少々気掛かりではあるが…所詮ゲームはゲーム。現実の代わりにはならない。



〜〜 転生の女神side 〜〜


 「あなたは転生のチャンスをあたえられ……チート能力を授けます。スキルポイントをカンストまで付与しましたので、選んで……うわーーーー!」


 転生者候補が突然光とともに消え去った。女神は???と何が起きたのかわからず、呆然と立ち尽くす。

 なにかとんでもない力が干渉した事が感じられる。それが何かはわからない。


〜〜 転生の召喚をしてた王国side 〜〜


 転生の魔法陣に魔力を注ぎ光があふれる。

あとはこの光が強まっていき……いざ召喚勇者降臨!と期待しはじめた途端に、プスンと魔法陣が停止した。


国王「何がどうなったのぢゃ?」

魔導師「あ……えっと……これは(汗)」

国王「👈👈死刑」

蠢く蟲に齧られ魔導師たちが悶え苦しむ。


ーーー

(作者より)

嫌だなぁ。リスペクトですよ。リスペクト。おちょくってるつもりないですよ。

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